綾瀬はるか×大沢一菜×森井勇佑の『ルート29』回想録 友達になった3人が語り合う“誠実さ”とは
3人の心を軽くしてくれた出会いとは
──中盤で登場するのり子の姉・亜矢子の「(仕事を)うまくなんかやる必要はない。誠実にやればいい。でも、その誠実ができない」という言葉が沁みました。 綾瀬:私もあそこはやってて気持ち良かったです。 森井:へえ、そうなんだ。 綾瀬:なんだろう。声のトーンもあるのかな。 森井:あの鳥取弁のリズムは心地いいものがあるよね。 綾瀬:そうかも。リズムも心地いいし、言ってることは難しくて何を言いたいのか掴みかねるところはあるんだけど、でもお姉ちゃんがすごく悩んでいて一生懸命なんだなということは伝わってくる。言いたいことがまとまりきらなくて、どんどん話が飛んでいくのに対して「うん。わかる。そういうことってあるよな」と思ったというか。 森井:自分の気持ちを言葉でちゃんと伝えることってめちゃくちゃ難しいですよね。 綾瀬:難しいですね。 森井:頑張って話したところで、自分が思ってることをちゃんと言えたかどうかも、言った瞬間わからなくなるし。 綾瀬:本当そうです。わからなくなる。 ──うまくやることと誠実にやることのギャップは、仕事に携わる人間として共感できるものだと感じましたが、みなさんはどう思いましたか。 大沢:誠実の意味って何? 森井:誠実っていうのはね、一生懸命やることです。 大沢:じゃあ一生懸命やることと、うまくやることの違いは? 森井:何だろう。一生懸命やるっていうのは、魂を込めてやるということじゃないかな。 大沢:それとうまくやることってどう違うの? ──大変核心を突いた質問ですね。大沢さんの問いに大人であるお二人はどう答えますか。 大沢:教えてください! 森井:そもそも僕はうまくやれることが皆無なんですよ。うまくやろうとしてもそれができない。 綾瀬:うんうん。 森井:だからむしろうまくやることの方に憧れがありますけど。 綾瀬:うまくやることの大事さもありますよね。たとえば、ちょっと大人になって周囲と調和とるみたいなことは、うまくやることだと思いますし。 森井:そうなんです。僕はそういうことが全然できないから、亜矢子みたいに悩むことがなかった気がする。 綾瀬:理想としては、誠実にやりつつ、うまくやれたらいいですよね。 ──綾瀬さんの誠実ってどういうことか聞いてもいいですか。 綾瀬:正直であることですね。もちろん中にはいい嘘もあって、人を元気づけるためにつく嘘はいい嘘と言えるのかもしれないですけど。うまくやろうとしている表面は見えるのに、真意が見えないのはやっぱり寂しい。一緒に仕事をしていて、本音を話せなかったり、話していても何を考えているのかわからない、本当の思いはどこにあるんだろうと感じてしまう人に対して不誠実というか、愛がないと感じるかもしれないです。 ──ロードムービーである本作では、旅の途中でいろんな人と出会って別れていきます。そのたびに心が軽くなっていくような気がしたんですが、みなさんの自分の心を軽くしてくれた出会いを教えてもらえますか。 大沢:私は、友達。家族の次に大切ですね。 ──友達といるときの大沢さんは、今ここにいる大沢さんとやっぱり違いますか。 大沢:まったく違うと思います。もっと友達の前ではうるさいと思います。 綾瀬:どんな感じか見たいな。 森井:リーダーっぽいの? 友達の中で。 大沢:……友達に聞かないとわかんない。 綾瀬:私も一菜ちゃんと同じで友達ですね。何でも話せる友達の存在ってすごく大きくて。何か考えて悩んでたりしているときも、友達と話していると最終的にすごく笑っちゃって、「あれ? 何の話だっけ?」みたいな感じになることがよくある。仲のいい友達とはしょっちゅう遊ぶから、世間話のように「今日、こんなことがあって~」とその日のちょっと落ち込んだことも聞いてもらっています。 ──森井監督はどうですか。 森井:僕は映画だと思います。映画に出会って、僕の心は軽くなった。僕が人生で初めて観た映画は『ジュラシックパーク』だったんですよ。映画館に入った瞬間、暗闇の中、ティラノサウルスが吠えてるところで。なんだこれと思ったら、ちょうどそこがクライマックスでエンドロールになったっていう。当時はまだ映画館が入れ替え制じゃなかったら、そういうことが普通にあったんですよ。で、また最初から観ました。 大沢:『ジュラシックパーク』って恐竜の? 森井:そう、恐竜の。恐竜が好きだったんですよ。 大沢:一緒だね。 森井:そっか。一菜もティラノサウルスに会いたいって言ってたよね。 大沢:うん。噛まれてみたい! ──では最後に、この3人で旅をするならどこに行きたいですか。 大沢:どこ行きたい? 綾瀬:どこがいいかな。じゃあ、商店街で鬼ごっこは? 森井:いいですね。でも、あれめちゃくちゃしんどいんだよな(笑)。 綾瀬:商店街でおいしいものをつまみながら、鬼ごっこをしましょう。 森井:わかりました。じゃあ、3人で鬼ごっこということで(笑)。