札幌の女性作家 初挑戦の長編で受賞しデビューした「奇跡」
最近あなたの身の回りでラッキーなことは起きませんでしたか? 「絶対不利と思われていた試験がいい結果だった」「ずっと失くしたままだった大切なものが見つかった」「恋の告白が思いのほかうまくいった」などなど。「奇跡」と思われるものには、「キセキ」と呼ばれる存在が関わっている――。こうしたテーマを描き、第10回日本ラブストーリー&エンターテインメント大賞(宝島社主催)の最優秀賞を受賞したのが、札幌市在住の女性作家・田丸久深(たまる・くみ)さんの『奇跡33756』です。それを文庫用に改稿した『僕は奇跡しか起こせない』で作家デビューを果たしました。
高校時代に見たテレビから着想
田丸さんは、北海道南部の港町出身の26歳。昼間はOLとして働きながら、作家活動を続けています。小説執筆に目覚めたのは中学時代。以来、多くの賞に応募してきましたが、結果は思わしくなく、厳しい書評に筆が止まってしまうことも……。そして、高校卒業後、社会人になってから少しの時間を経て札幌へ。そのタイミングで初の長編に挑戦します。それが、『僕は奇跡しか起こせない』の母体となった『奇跡33756』です。 『奇跡33756』は、幼くして亡くなった小学生が、同級生だった女性を守るために「キセキ」という仕事に就き、その「キセキ」は雨が降っている時のみに現れ、数々の「奇跡」を起こすというストーリー。 実はこの「キセキ」という存在を思いついたのは、田丸さんが高校時代のこと。とあるテレビ番組で、古井戸に落ちた少年が奇跡的に助かったという話を見て、「古井戸の下で支えている存在がいたら面白いのでは?」ということをひらめき、「キセキ」の存在をどんどん広げていきました。
文庫版ではエンディングを変更
実は、今回発売となった『僕は奇跡しか起こせない』と『奇跡33756』では、大きく異なっている点があります。それが、登場人物の年齢・職業設定とエンディングです。 『僕は奇跡しか起こせない』では、同級生数人(社会人)と教え子(学生)の関係性が描かれていますが、『奇跡33756』ではそれらが全員同級生(学生)であり、エンディングにいたっては全然違うものに変わっています。一度完成したストーリーを改稿するのは「さすがに大変でした」と田丸さん。