崩れ始める、新卒一括採用 なぜ綻びが生じているのか?
新卒でも「ジョブ型」志向、高まり
最近は配属ガチャにとどまらず、自分のやりたい仕事を優先し、それが可能な企業を選ぶというジョブ型志向が高まっている。 学情が2025年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施した調査(2023年5月12日)によると、ジョブ型採用に興味があると回答した学生は44.6%。「どちらかといえば興味がある」と答えた学生を含めると81.4%に上る。その理由として「仕事内容が明確だと、希望するキャリアを築けるかイメージがしやすい」「ジョブ型のほうが専門性を磨くことができると思う」という声が挙がっている。 学生に限らず社会人にもジョブ型の人気は高い。 日本生産性本部の「第15回働く人の意識に関する調査」(2024年7月29日)では、ジョブ型を「仕事内容や勤務条件を優先し、同じ勤め先にはこだわらない働き方」、メンバーシップ型を「同じ勤め先で長く働き、異動や転勤の命令があった場合は受け入れる働き方」と定義。希望する働き方を聞いたところ、ジョブ型を希望する人が64.8%、メンバーシップ型が35.2%となっている。ジョブ型志向はコロナ禍の2021年7月調査以降高い傾向にある。 また、企業の側も大企業を中心に「ジョブ型雇用」を導入する企業が増えている。政府も雇用の流動化を促す「三位一体の労働市場改革」の一つとしてジョブ型雇用の導入を後押ししている。 例えば、富士通はこれまで管理職や一般社員に適用していたジョブ型人事制度を2026年度入社の新卒社員にも広げる予定だ。同社はリリースで「これまで一部の採用コースで適用していた、入社後に一人ひとりが担うジョブや職責、ジョブディスクリプション(職務記述書)をベースとした『ジョブ型人材マネジメント』に基づく採用形態へ本格的にシフトしていきます」と述べている。 内閣官房から発表された事例集「ジョブ型人事指針」(2024年8月28日)の中でも、富士通については「新卒採用でも職種や職務を限定した採用に変更する」と記されている。 日本の新卒一括採用は、前述したように就活ルールの崩壊と、年間を通して採用活動を行わざるを得ない通年化の傾向に加えて、ノースキルを前提に会社主導で異動させる方式から、本人の希望するジョブを主体とした採用・雇用へと変質しつつある。 ただし、ジョブ型雇用は働き手にとってリスクもある。