観光客で大渋滞…。オーバーツーリズムで「修学旅行」の定番“京都・奈良”に見直しの動きあり?
◆オーバーツーリズムが修学旅行にも影響。そもそもなぜ京都が定番?
修学旅行の行き先はどう決まるのでしょうか。そもそもなぜ、京都と奈良が定番なのでしょう。日本修学旅行協会 理事長の竹内秀一さん、事務局長の高野満博さんに話を聞きました。 【修学旅行の見学先TOP20】高校ではユニバーサル・スタジオ・ジャパンが1位。中学は? 「学校によって修学旅行の狙いは違います。ですから、本来は行き先が同じである必要はありません。修学旅行は単なる旅行ではなく、学校の教育課程の一環ですから、地域の特性、生徒の実情、学校の教育目標などを総合的に考慮したうえで計画されるものです」と同協会理事長の竹内さんは話します。 そうはいってもやはり京都・奈良は人気があります。同協会が発刊している『教育旅行年報データブック2023』によれば、中学校の修学旅行先トップ5は、京都・奈良・大阪・東京・千葉。高校では、大阪・京都・沖縄・東京・奈良の順になっており、京都と奈良はいずれもトップ5にランクインしていました。 京都が選ばれる理由について、「最近は修学旅行にも探究学習を取り入れていますが、以前は歴史学習や文化財学習がメインでした。京都ほど歴史や文化の学びの要素が豊富な場所はそうありません。また狭い範囲に有名な神社仏閣が集中しているうえ、地下鉄と路線バスで移動しやすく、班別行動に適しています」と竹内さんは説明します。 しかし京都では昨今インバウンド増加によるオーバーツーリズムが問題になっており、修学旅行にも影響が出始めています。 同協会事務局長の高野満博さんによれば、「京都では、路線バスが満員で予定通りに乗れない、事前に班別行動で計画したコースを回れないといったことが出てきています。また宿の価格も上昇し、貸し切りバスの予約も取りにくくなっています」とのこと。 加えて近年は、猛暑によって運動会などの学校行事の日程を変更し、それに伴い修学旅行の時期がずれる学校も出てきています。
◆京都・奈良以外の候補として注目のエリアはどこ?
こうした状況もあって、京都・奈良以外の場所を選ぶ学校も出てきています。注目地域の一つが北陸です。 「京都・奈良を訪れるのは首都圏の学校が多く、新しい行き先として新幹線を使える北陸が注目されています。金沢では京都のように班別行動を実施する学校が多いです。北陸新幹線が延伸したため、金沢と福井の組み合わせも増えています」(竹内さん) 班別行動のしやすさという点では、路面電車が走っている長崎も人気。その他、農村や漁村での民泊体験へのニーズも高まっているとのことです。 「民泊は異なる生活文化を体験する刺激もありますし、1次産業を目の当たりにすることはキャリア教育にもなります。また宿泊と体験を一緒にできるため、費用を抑えやすいメリットもあります」(竹内さん)