文楽界支える人間国宝・吉田和生、桐竹勘十郎、吉田玉男 「三羽烏」が次世代に寄せる期待
大阪が誇る伝統芸能「人形浄瑠璃文楽」が今、充実のときを迎えている。同時期に入門し、「文楽の三羽烏(がらす)」と呼ばれた人形遣いの吉田和生(77)さん、桐竹勘十郎(71)さん、吉田玉男(71)さんの3人の人間国宝がそろい、円熟の芸で見る者を魅了する。1月3日に開幕する初春公演の「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」九段目で共演する3人に、入門時の思い出や今年の抱負を聞いた。(聞き手・田中佐和) ――同時期の入門で切磋琢磨(せっさたくま)された仲です 和生 僕と勘十郎さんは昭和42年、玉男さんは43年入門ですが、同期ですと言っています。入門当時は人形遣いが不足していて、僕らの1つ上が10年間あいていてね。若手時代は金の卵みたいに扱われました。 勘十郎 忙しかったけれど、短期間で無理にでもいろいろ経験させてもらったことが非常にいい勉強になりました。 ――和生さんは品格ある女方(おんながた)や立役(たちやく=男性役)、勘十郎さんは躍動的な役が似合い、玉男さんはどっしりとした立役です。 和生 それぞれが師匠の芸風を引き継ぎ、自然とすみ分けができた。だから昔からライバルという感じではないんです。今は3人でそれぞれの相手役ができるようになったしね。 勘十郎 何十年も相手役を勤めているので気心が知れ、こうしたらああするやろう、というのが分かるんですよ。 玉男 初役の相手役でもこの3人なら自然に動けるから、事前の打ち合わせもしないです。 ――令和5年に玉男さんが人間国宝に認定され、3人全員が同じ栄誉に 玉男 決まってすぐ2人に電話したら「良かった、おめでとう」と言ってくれて。 勘十郎 全員元気でこんな日が来るなんて、 若い頃は想像もできなかった喜びです。 ――今年の初春公演では九段目「山科閑居(やましなかんきょ)の段」で共演します。主君の仇討を誓う大星由良助の家族と、その大星家に娘を嫁がせる加古川本蔵の家族、ふたつの家の悲しみと情が複雑に交差する、文楽屈指の大曲です 玉男 私は由良助役。3人でこうして重要な役をやらせてもらえるのがうれしい。