激戦州で相次ぎ敗北のハリス氏、アラブ票失う…ウクライナ支援は争点ならず
米大統領選で民主党のハリス副大統領が激戦州で敗れた要因の一つとして、パレスチナ自治区ガザで攻撃を続けるイスラエルへの米国の軍事支援に反発したアラブ系の票を失ったことが挙げられる。ロシアが侵略するウクライナへの支援についてウクライナ系住民は支援継続を訴えたが、大きな争点とはならなかった。(米ミシガン州ディアボーン 金子靖志) 【グラフ】ミシガン州、ペンシルベニア州の得票率
ミシガン
「ハリス氏の敗北は我々アラブ系の声を無視した結果だ」。ミシガン州ディアボーンで、教育や医療支援を行う非営利団体「イスラミック・センター・オブ・デトロイト(ICD)」のスフィアン・ナブハン事務局長(54)はこう強調した。
ディアボーンは人口約11万人の半数をイスラム教徒が占め、全米最大規模のアラブ系住民がいる都市。ハリス氏はイスラエルに苦言を呈しはしたが、バイデン政権は武器弾薬の供給を容認し、即時停戦を求めたアラブ系の反感を買った。
一方、共和党のトランプ次期大統領は選挙戦で何度もミシガン入りし、トランプ氏に懐疑的だったイスラム教指導者らに「私ならガザでの戦争を止めることができる」と呼びかけ、支持を取り付けた。ディアボーンは民主党支持が圧倒的に多かった地域だが、今回の選挙でトランプ氏がハリス氏を6ポイント上回った。
「ハリスを見捨てろ」運動を主導してきたイスラム教徒のファラー・カーンさん(48)は「アラブ系の反発は州全体に広がり、ハリス氏が獲得できるはずのアラブ票のほとんどがトランプ氏か第3勢力に流れた」と述べた。
ミシガンの人口約1000万人のうち、アラブ系は24万人にすぎない。だが、2016年、20年の選挙はいずれも僅差で、今回も約8万票差でトランプ氏が勝利した。カーンさんは「トランプ氏は今回の選挙でアラブ系の重要性を認識したはずだ。かつてのトランプ政権時代のような反イスラム政策はしないはずだ」と語った。
ペンシルベニア
一方、ペンシルベニア州では、約12万人のウクライナ系住民の動向が注目された。ウクライナ系は共和党支持とされてきたが、ウクライナ支援に消極的なトランプ氏に危機感を強め、今回は多くがハリス氏を支持した。