「凄まじく気持ちが悪いですね」と同業者にも言われる化け物が話題のマンガ『ういちの島』とは 都留泰作×武富健治 特別対談
どこか人間くさいからこそ気持ち悪い化け物
都留:パニックホラーは化け物を見せるマンガではないと思っています。特殊なシチュエーションによって人間がどう反応するか? そこがキモだと思っています。 武富:見たいのは人間の反応ですよね。 都留:それを新鮮に描くことができたら面白い。 武富:パニックホラーという枠があることによって、枠から枝分かれしても、直線的な内容に収めることができますね。 都留:枠があるから伝わりやすいし、伝えやすい。 武富:化け物の造形のインパクトが凄いですが、どこか人間くさい。だからこそ凄まじく気持ちが悪いですね。 都留:化け物って人間離れすると気持ち悪さも減っていくじゃないですか。 武富:都留さんの描く化け物はお腹の中のまで緻密なので、読んでいると生理的な感覚が触発されます。あれっ、自分のお腹、無事かな~って(笑)。今後も色々なタイプの化け物が出てきそうですね。 都留:さらに進化したりします(笑)。 武富:今後が楽しみです。島を出て本土にも行けそうだし、場合によってはアフリカ展開もあるのかな? 都留:そうなったら『ういちの国』や『ういちの世界』もできますね。 武富:どこまで行くのか? どこまで描くのか? 楽しみです。最後に読者の方々へのメッセージはありますか? 都留:人間には日常生活では、滅多なことでは見せない、自分の中の核心部があると思います。通常は他人のプライバシーには立ち入らない。ですが『ういちの島』のような非常事態では、そんなことは言っていられない。本来は立ち入ることができない、他人の心の最深部。そこに入ってしまうドキドキ感と罪悪感を通して、日常生活では見過ごされがちな、人が人と対峙するときの緊張感までをも、描けるパニックホラーにしたいと思っています。 武富:さまざまな人が入ってくるオンラインゲームの感覚。自分だけが主人公ではいられない、関係性の複雑さ。読んでいて、そんな感覚が湧いてきました。 都留:嬉しいです。ゲーム感覚は常に意識しています。今回の発想の根源には人狼ゲームがあります。人狼ゲームをもう少しファンタジーにして、且つリアリティも出したい。そんな思いがあります。 武富:凄くうまくいっていると思います。 都留:ここからさらに村人なども登場する予定なので、人狼ゲーム的要素は強くなるかもしれません。 武富:ますます楽しみですね。読者の方々のためにもがんばって描き続けて下さい。 都留泰作 岡山県出身。漫画家、理学博士。2007年SF作品『ナチュン』(講談社/月刊アフタヌーン)で連載スタート。その後『ムシヌユン』(小学館/ビッグコミックスペリオール)。竜女戦記(平凡社)と話題作を描く。現在は、くらげバンチにて『ういちの島』を連載中。 武富健治 佐賀県出身。漫画家、京都精華大学マンガ学科教員。代表作のひとつである『鈴木先生』(双葉社/漫画アクション)は、このマンガがすごいにランクインされて映画化。現在は双葉社の漫画アクションにて『古代戦士ハニワット』を連載中。 [文]新潮社 協力:新潮社 新潮社 Book Bang編集部 新潮社
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