ショーンノリスは泣き虫ゴルファー!? 日本シリーズの涙の理由は? 世界を転戦してきた苦労人の人柄とは【佐藤信人アイ
ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は男子ツアー最終戦の日本シリーズで優勝したショーン・ノリスについて語ってもらった。 賞金王・金谷拓実のドライバー連続写真(正面)
日本シリーズJTカップで、ツアー通算7勝目を挙げたショーン・ノリス。21年の日本オープン以来3年ぶりの優勝で、ホールアウト後のインタビューではまたしても大粒の涙を流しました。 今では代名詞ともいえるこの涙こそ、ノリスのピュアさの表れでしょう。アマチュア時代はルイ・ウエストハイゼン、シャール・シュワーツェルとともに世界アマの南アフリカ代表に選ばれたエリート。 しかし、その後は世界中のツアーを転戦した苦労人です。16年、日亜共催のレオパレス21ミャンマーオープンでプロ初勝利。以来、日本ツアーを主戦場に、アジア、欧州、PGAツアー、LIVゴルフと世界中のツアーで戦ってきました。 母国・南アフリカで出演したYouTubeを見たことがあるのですが、「あの国が大好きなんだよ」「どこに行くにも移動がスムーズで簡単」「人がフレンドリーで本当にナイスなんだ」と、日本を絶賛する親日家です。 そのYouTubeでゴルフのターニングポイントとして挙げたのが17年のツアー選手権での優勝。この年、同選手権までの賞金ランク上位2名には、全英オープンの出場権が。南アフリカ人にとって、最も権威があり出場したいメジャーが全英オープンだそうで、この優勝時も目を潤ませていたようですが、「父を長年の夢であった全英オープンに連れて行ける」が涙の理由でした。 さらに18年のHEIWA PGMチャンピオンシップは直前に南アフリカで第1子の出産に立ち会ってからの出場。父親となっての初優勝で涙を流します。翌年の東海クラシックでの優勝時は、3カ月前に亡くした父に捧げる号泣。 21年の日本オープンは割と楽な試合展開でしたが、ナショナルオープンの重みを感じていたのか、ここでもやはり号泣しました。 ノリスの流す涙は、日本へのリスペクトを感じさせ、そうした人柄が日本人の心に響くのだと思います。そして今回は優勝した翌々日が亡き父の誕生日だという。シロクマのような風貌の大男が、18番ホールで涙を流しました。 ノリスの最大のすごさは、自分の弱点との真摯な向き合い方。初優勝のミャンマーでは、JGTOのサイトによると最終日に最終組で優勝争いを演じた矢野東がノリスについて「おそらくアプローチイップス」と。当人はアプローチが得意ではないことは暗に認めていますが、正面からは認めてない感じ。 でも、ときに弱点は克服しようとするほど、自分を責めたり落ち込んだり、あるいは恥ずかしく思ったりするもの。ところがノリスの場合、「ゴルフは上がってナンボ。アプローチが苦手なのは自分でもわかっている」と、グリーンの外からでもパター使用という攻め方に徹します。 ともすればプロはサンドウェッジでカッコよく寄せたがるのですが、自分にとって最適最善を選択できるのがノリスの強み。彼のゴルフの〝しぶとさ〞にもつながっていると思います。これもプロとしてのすごみであり、参考になる方も多いのではないでしょうか。 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年12月24日「さとうの目」より
週刊ゴルフダイジェスト