〝自分の1冊〟手渡したい 「母の味」の赤だし味噌だれで味わう、名前のない鍋
みなさんはどんなとき、鍋を食べたくなりますか。 いま日本で生きる人たちは、どんな鍋を、どんな生活の中で食べているのでしょう。そして人生を歩む上で、どう「料理」とつき合ってきたのでしょうか。 「名前のない鍋、きょうの鍋」をつくるキッチンにお邪魔させてもらい、「鍋とわたし」を軸に、さまざまな暮らしをレポートしていきます。 今回は、岡山で絵本のお店を開く女性のもとを訪ねました。(フードライター・白央篤司) 【画像】東海地方でおなじみの「味噌おでん」 手作りの味噌だれ、母の味
<都築照代(つづき・てるよ)さん:愛知県犬山市生まれ。旧姓・服部。大学時代に教職と司書の資格を取り、卒業後に名古屋の会社に就職。25歳のとき結婚して退職、夫の転勤に伴い日本各地で暮らす。子育てをしつつ図書館で司書として働き、2016年に岡山県倉敷市に『つづきの絵本屋』(https://tsuzukinoehonya.com/)をオープン。二子あり、現在は夫とふたり暮らし> 倉敷駅から歩いて15分かからないぐらい、住宅街を入ったすぐのところに『つづきの絵本屋』はあった。 ホームページを見れば、せわしない現代だからこそ「絵本で子育てをする時間を持ってほしい。絵本は大人にも子どもにも優しく効く、副作用のない心の薬です」とある。素敵な言葉だなと思った。 こんな言葉をつむぐひとを取材してみたくなり、店主の都築照代さんに依頼メールを送ってみたら「私でよければ」とお返事をいただけて、うれしかった。 「お鍋の取材ということで、子どもたちに聞いてみたんですよ。お母さん、どんな鍋よく作ってたーって。そしたら『味噌おでん!』ってどっちからも返ってきて。私、出身が愛知県の犬山市なんです。食べたことありますか、味噌おでん?」 はい、名古屋であります。最初食べたときは濃い茶色の汁に驚きました。 「ああ、そういうのもありますけど、うちのはお出汁で具を煮て、小鉢にとってから味噌だれをかけるんです。私も小さい頃からおでんはずっとこれで」 そうか、東海地方でおなじみの味噌おでんには2タイプあるのだった。味噌を溶いた汁で煮込むおでんと、煮た具材に味噌だれをかけて食べるおでん。家によっても違うし、気分で両方を作り分ける人もいる。