妻の“不倫”を暴く親友(恒松祐里)の嫉妬。DNA鑑定が告げる悲しい真実 『わたしの宝物』5話
すれ違うそれぞれの “幸せのかたち”
美羽が立ち戻るべき場所は、気持ちを推しはかるべき相手は、冬月でも宏樹でも、真琴でもない。自分でもない。たった一人、大人たちのしがらみなど関係なく純粋な目をして笑う、娘の栞だろう。 「おやすみ」と言いながら、ベッドで寝ている栞をいとおしそうに見つめる美羽の表情が、すべてを物語っている気がしてならない。美羽のよりどころは、子どもを産んだ瞬間から、栞以外にありえないのだろう。 「娘が元気な顔してるのが一番だから」と言ったのは、美羽の母である夏野かずみ(多岐川裕美)だ。彼女は「美羽、いまが幸せね」「宏樹さんと栞と、幸せになってね」と言葉を重ねていた。美羽にとっての幸せ、宏樹にとっての幸せ、冬月にとって、真琴にとって、莉紗にとって……。それぞれの理想とする“幸せのかたち”は、すれ違う。それでも、大人の都合で簡単に子どもの未来がねじ曲げられるのを、良しとしてはいけない。 栞のハーフバースデーを祝いながら「栞、大きくなったよね」と泣く宏樹。当初は子どもを持つことを避け、美羽の妊娠がわかっても育児をするつもりはない、と告げていた彼だが、そんな片鱗(へんりん)はもうどこにもない。 ひそかにDNA親子鑑定を行い、栞の実父が自分ではないとわかっても、すぐに美羽を責めなかったのは、悲しさが先立っていたからか。それとも、自身が美羽に対し向けてきたモラハラ言動を思い返し、さもありなんと思い至ったからか。悲嘆に暮れた宏樹がとった行動は、栞と二人、海へ向かうことだった。 このままでは、誰も幸せにならない。そんな焦燥感ばかりが募る。ハッピーエンドが想像できないドラマだけれど、誰か一人が幸せになったら、片方で誰かが不幸に陥る、そんなどうしようもない構造になっているけれど、それでも、どうか全員が幸せになる道を。そんな風に願ってしまう。
『わたしの宝物』 フジ系木曜22時~ 出演:松本若菜、田中圭、深澤辰哉、さとうほなみ、恒松祐里、多岐川裕美、北村一輝ほか 脚本:市川貴幸 主題歌:野田愛実『明日』 プロデュース:三竿玲子 演出:三橋利行(FILM)、楢木野礼、林徹
文:北村 有