アラ還・独身で受けたまさかの発達障害通告。カウンセラーは「やりたいことだけやりなさい」…知人も離れ「いっそのこと…」と思った瞬間に出会えた生き方のヒント
〈アラ還・発達障害の手記〉2
不安障害で通っていたメンタルクリニックの院長が引退し、代わりに紹介された大学病院で発達障害と診断された桑原カズヒサ氏。還暦間近に衝撃的診断を受けた桑原氏が自身の症状と周囲の反応とに苦しみながらも、前を向けている理由を語る。(前後編の後編) 【画像】58歳のときに発達障害と診断された桑原カズヒサ氏
カウンセリングを受けるも、気が滅入る日々…
「あなたは本当にやりたいことだけをやりなさい」 スカイプ経由で、初老の男性カウンセラーが哀れみを讃えた表情で語りかけてくる。 診断から数ヶ月後、僕は区が運営する発達障害支援施設の公認心理士さんにリモートで無料カウンセリングを受けるようになっていた。 当初はこれで症状がよくなるのではないかと期待していたが……カウンセラー氏は同じ言葉を繰り返すだけだった。 「本当にやりたいこと?」 30年続けてきたライター業がそれに該当するか自問したが、簡単には答えはでない。 「この歳で本当にやりたいことと言われても、見当がつきません」 若くない上に仕事以外に趣味もない。雲を掴むような話に困惑した。 「では、やりたいことが見つかるまで、いろんなことを試せばいいのです」 「でも今の仕事を辞めて、やりたい事を探しだしたら経済的に立ち行かないです」 「生活保護があるでしょ」 「僕には借金もあるし、生活保護受ける前に自己破産してしまいますよ(注:生活保護は借金の返済には使えない)」 「債務整理の方法なら、ネットで調べられますよ」 そこまでして、仮に鉄道オタクとして目覚めたら、鉄道を眺めているだけで暮らせるとでもいうのだろうか。 彼の真意が掴めず、「で、仮に僕がこの歳で本当にやりたいことを見つけたとして、大成できるんですか!」と質してしまった。 すると「あなた、大成したいんですか?」と言い返された。その言葉に「発達障害のくせに?」の響きを感じた。 発達障害の診断を受けたとき以上に気が滅入ってしまい、次のセッションの予約はキャンセルすることにした。 翌週、秋の夕暮れ、僕は都内の繁華街を、息を切らしながら急いでいた。道に迷って約束の時間に遅れそうなのだ。 初めて訪れる場所に行くときはいつもこうなる。