原発の恩恵で地方交付税がない佐賀県玄海町。共存意識が強い町でも「核のごみ」受け入れには強い抵抗感
原発の使用済み燃料から生まれる高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査が、九州電力玄海原発のある佐賀県玄海町で6月に始まって半年が過ぎた。最終処分の国民的議論を促す「呼び水」(脇山伸太郎町長)として全国3番目に受け入れたが、その後新たな市町村は現れていない。半永久的な埋設につながる判断に向けた社会的な合意形成は道半ばだ。11月下旬、地方新聞エネルギー研究会の一員として現地を訪ねた。 【写真】最終処分場選定の流れを図解で確認
玄海原発では、茶色の鉄骨に囲われた海抜24メートルの一角をショベルカーが掘り下げていた。2027年度からの運用を目指す、使用済み燃料の乾式貯蔵施設の建設現場。搬出先である日本原燃の再処理工場(青森県)が完成延期を繰り返す中で、構内の貯蔵能力に余裕を持たせるためだ。 17メートル下の岩盤に建てる。完成すれば、使用済み燃料が構内で満杯になるまでのタイムリミットは10年延びて38年となる。満杯になると原発は稼働できない。福山浩之次長は「核燃料サイクルが回らないと運転できず、(再処理工場の)完成が重要だ」と説く。 ■重い決断 使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルは国が堅持する政策だ。この過程で出るのが核のごみ。処分地選定は市町村の応募や国の申し入れに対する地元の受諾で始まる。建設前に文献調査から始まる三つの調査があり、いずれも終了後に地元首長や知事が反対すれば手続きは止まる。これまで意欲を示したのは玄海町を含め3町村にとどまる。
玄海町は原発立地自治体として初のケースだ。議会が4月、文献調査受け入れを求める請願3件を賛成多数で採択したのがきっかけ。使用済み燃料の満杯に伴う玄海原発の停止や核燃料サイクルの行き詰まりが経済停滞を招くとの懸念が背景にある。 採択後に国がすかさず要請し、脇山町長は5月に「重い決断」と受け入れを表明した。選挙がある立場で長期にわたる調査に手を挙げる難しさを打ち明け、「自分も今後、決断に責任を果たせるかどうか。国が積極的にお願いする形の方がいい」と語る。知事は処分場誘致に反対している。 請願に賛成した岩下孝嗣議員=原子力対策特別委員長=は表明以降、新潟、福井両県の立地市町と東京都中野区の計5自治体の議員らが意見交換に訪れたと説明する。だが、手を挙げる意欲は弱かったとし、「(国などは)議論をもっと広げてほしい」と訴える。 ■科学的特性 調査の実務を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)や国などは、昨夏から今年8月末までに全国137自治体を訪ね、理解促進を図る。国の科学的特性マップで適地とされた地域が中心という。