健康⾯でも注⽬のラズベリー なぜ冷凍でしか売っていない?
ケーキやパフェなどのスイーツのトッピングでもおなじみのラズベリー、ブラックベリー。生の完熟果実を食べたことはありますか? じつは、市販されている果実は冷凍のものがほとんど。完熟した甘酸っぱい味わいは、自宅で栽培した人ならではの醍醐味です。ラズベリーもブラックベリーも丈夫で育てやすく、大株を春に植えるとまもなく実がなるので、果樹の栽培が初めて方におすすめ。庭やベランダで、気軽に育ててみませんか。『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビ ラズベリー ブラックベリー』(著・國武久登)から紹介します。 みんなのラズベリーの写真
生食がおいしく家庭果樹向き
甘酸っぱく、かわいらしい果実が魅力のラズベリー、ブラックベリー。赤いラズベリーと黒いブラックベリーの両方を飾りに使ったスイーツなどには、マンゴーやブドウなどほかのフルーツとはまた違った華やかさがあります。ただ、完熟果は傷みやすいこともあって、食料品店で販売されているのは冷凍や加工されたものが主流です。とれたての完熟果を生食で、よい香りとともに味わえるのは、まさに家庭園芸ならではの楽しみといえるでしょう。家庭での栽培は容易で、庭植えはもちろん、ベランダなどを利用しての鉢植えでも十分に育てられます。苗木1本でも実がつく手軽さが一番の魅力。大株に育つと収穫期には1株から毎日のようにたくさんの果実がとれます。生食で存分に味わった残りは、ジャムやジュースなどに加工しての保存も簡単。家族全員で楽しむことができます。
ラズベリー(左)は1つの株に未熟から完熟まで色の異なる果実が鈴なりにつく。ブラックベリー(右)の果実はラズベリーより一回り大きく、存在感たっぷり。
植物学的には?
ラズベリー、ブラックベリーともに、バラ科(Rosaceae)のキイチゴ属(Rubus)に分類される低木の落葉果樹です。キイチゴは漢字で「木苺」と書くように、木になるイチゴの総称で、その仲間は世界中に分布し、特に日本を含む北半球に多く自生しています。キイチゴ属は枝上での突然変異(枝変わり)が非常に多く、その数は300種とも3000種ともいわれます。人類は古くから野生種のキイチゴの果実を採取し、利用してきました。そのなかから栽培種が生まれてきました。栽培種はラズベリー(raspberry)とブラックベリー(blackberry)に大別されます。ラズベリーの主な自生地はヨーロッパやアメリカで、種間交雑から現在の栽培種が育成されてきました。一方、ブラックベリーはアジア西部、南ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカに自生し、現在の栽培種は主に北アメリカの野生種が改良され、育成されたものです。日本にも北海道から沖縄まで40種以上のキイチゴが広く自生しており、やはり古くから生食用として利用されてきました。特にモミジイチゴ、エビガライチゴ、クサイチゴ、バライチゴ、カジイチゴなどは酸味が少なくほのかな甘みがあり、生食に適していますが、それらの野生種が栽培種として改良された例はありません。