「手作りへの愛着」職人作家が技を披露 大阪の商店街で
「手作りへの愛着」職人作家が技を披露 大阪の商店街で THEPAGE大阪
大阪市生野区の生野本通商店街でこのほど、生野のすぐれたものづくり力を発信する「いくもん匠まつり」が開かれ、区内に工房を構える3人の職人作家が、ご自慢の技や作品を披露した。和紙の張子のお面、木製万年筆、切子ガラス。ジャンルこそ異なるものの、3人に共通するのは、手作りへの愛着と熱い探求心だ。
和紙のお面に素朴さとモダンを組み合わせて
房本デザイン工芸の房本武義さんは和紙でお面を作り続け、「なにわ張子面」と呼ぶ。キツネ、鬼、天狗。いつとはなしに見かけてきた懐かしさが漂う。「和紙の素朴なぬくもりを何よりも大事にしています」と語る房本さんの表情も、穏やかで柔らかい。 とはいえ、素朴一本槍ではない。正統派の白いキツネのお面は、神の使いとしての品格と親しみやすさを併せ持つ。しかし、黒いキツネは一転して、モダンでミステリアス。金や青とのゴージャスな配色とあいまって、インテリア作品として洋室の壁に飾りたくなる。 「素朴さの中にも、いくらか現代の風を取り入れたい。絵付けも手描きですから、同じキツネのお面でも、すべて表情が違ってきます」(房本さん) 目の前にあるキツネのお面を見比べると、確かにその通り。ものづくりの歴史に、すべてオンリーワンだった時代があったことに気付く。
木製の万年筆を一本ずつ手作り
万年筆とボールペンの手作りに打ち込むのは、平井木工挽物所を構える平井守さん。木工挽物所の看板にうそはない。万年筆の軸の素材は木に限っている。 ずらりと並んだ万年筆の数々を見渡すと、かすかなグラデーションを帯びながら、それぞれが微妙に異なる色彩色調を、静かに競い合う。サクラ、ツバキ、シタン、コクタン。木が本来持つ色合いや風合いを生かす。しかも、最初から計算尽くで、というわけではない。 「銘木店で『こんな色合いの木が入ったけれど、使ってみませんか』と声をかけられて、それではと、手に取ってみる。そこから始まることもあります」と平井さん。独特の薄紫の色合いは、パープルハートという輸入材でしか出せない。柔らかい杉材は万年筆に適さないが、屋久杉は別格。風雪に耐え樹齢を重ねて木目が細かいため、万年筆に仕上げると格調の高さが際立つ。 色合いの美しさや持ち味をしっかり引き出すことができるか。試行錯誤を経て、世界に一本しかない万年筆が誕生する。「削れない木はありません。何ができあがるか、私も楽しみなんです」。自在の境地で、次の一本と向き合う。