<ベトナム>毒まみれの土地 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
商業そして観光の拠点として急速に発展するベトナム中部の港町、ダナン。広いビーチを擁するこの町は、戦時中、休暇中の米兵の憩いの場としても栄えた。 ホットスポットは、空港滑走路の外れにあった。照りつける日差しがじりじりと額と首を焼き付ける。有刺鉄線が張られたその空き地の入り口の前に、厳しい顔つきの一人の兵士が、暑さと対峙するように口をへの字に結んで立っていた。敷地にはいると、ところどころに置かれた大きな円形の貯蔵タンクがみえる。汚染された土が収められているという。土を洗浄してまた元に戻す作業がこつこつとおこなわれているのだ。
空港は戦時中米軍の基地として使われ、1500万リットルもの枯れ葉剤が貯蔵されていた。もう一つのホットスポットであるアルオイと同じく、現在も高濃度のダイオキシンが検出される、いわば毒まみれの土地だ。最近の調査でも、近くの湖から獲れた魚から、健康基準量の100倍ものダイオキシンが見つかったという。 夕方、湖のまわりをぶらついていると、そこには腹まで水に浸かって魚採りをする男たちの姿があった。 (2009年7月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.