帰宅直後に鳴った電話、察した戦力外通告 5月の怪我で「終わった」…7月末に失った目標
7月末にチームは4選手を支配下登録…「ちょっと怪しいなって」
心身ともにストレスを抱える中で、7月末には4選手が支配下に昇格した。そのうち、前田純と三浦は自身と同じ左腕だった。「その時にちょっと怪しいなって思いましたね。左(投手)が2人支配下に入って、しかも僕より年下だったので。『そうだよな』みたいな。その時くらいが1番『ああ……』ってなりました。でも、どのみち投げられていないから。投げていて競争に負けたら、もっと悔しかったと思うんですけど……。かといって悔しくないかと言えばウソになる。その時が1番キツかったですね。8月に入ってもリハビリ組にいて、何を目標に(やればいいのか)みたいな感じになってしまった。今年でクビになってしまう可能性もあるのにって」。精神的にも相当堪えていた。 そんな時に支えてくれたのは森山良二、中谷将大両リハビリ担当コーチを初めとするスタッフ陣だった。「リハビリ(担当)の人たちが『最後まで頑張ろう』『今、頑張らないと、この先なにも繋がらないから』って言ってくれて。もう1回立ち上げることができました」。その中でも森山コーチは「僕のことを一番見ていてくれた。シャドーピッチングを毎回付きっきりで見てくれて、僕の気持ちが落ちている時には励ましの言葉やゲキをくれました」と感謝する存在だ。 現在は11月14日に行われる12球団合同トライアウトに向けて練習を続けている。「(戦力外通告を受けて)最初はまだ実感が湧かないというか、練習には来ているけど、いまいちピンときていない感じがあったんです。でも、トライアウトが近くなるとともに、徐々に気持ちが入ってきました。やらなきゃなっていう感じです」。今は迷いも邪念もなく前に進んでいる。 リハビリ明けでトライアウトが復帰戦となることへの不安はある。「自信がないことはないですけど、試合から離れているので。でも自信を持たないと、何をやっても上手くいかないのは、この4年間で感じてきた。落ち込んだり、気持ちが落ちたりした時に、パフォーマンスもダメになるので。自信をつけるためにも、上手くなるためにも、毎日練習をしている。そこをプラスに捉えて、トライアウトで投げられたらいいなと思います」。佐藤宏の言葉には自然と力がこもる。 練習相手は同じく戦力外通告を受けた村上舜投手。「初日はリハビリ明けで怖くて、ボールは投げられるけど、あまりいい球がいかなくて。2時間くらい村上と試行錯誤しました。アイツは正直にガンガン言ってくれるんで助かるんです。『いいよ、いいよ』って適当に言われるより、どんな風に見えているかが分かって。それでどんどん投げられて、ピッチングまで入って行けました」と感謝する。 3軍の頃からキャッチボール相手になることが多かった村上は、佐藤宏の良い時も悪い時も知っている。「プレイヤーとしての立場で、自分のボールを1番捕ってくれているから、あいつの言葉はすごく入ってきやすくて。不安なく投げられるようになってきました」と背中も押された。支えてくれる多くの人がいる。その思いも背負って挑み続ける。
上杉あずさ / Azusa Uesugi