【独自】地に落ちたビッグモーター板金工場 世界最高品質「ヤナセ」の仕事を請け負えるのか?
ビッグモーターの板金はヤナセの高い品質水準にこたえられるのか
ヤナセ広報担当者に「ビッグモーター社の板金工場がヤナセの下請けとして機能するようになるのか?」と確認したところ「ビッグモーター社の件は、これからのことは判りませんが、これまでのところご案内のような協働のお話は全くありません」との回答であった。 ビックモーター内でもまだ上層部のみが知る情報らしいが、もう一つ。ヤナセの協力工場として機能するにあたって重要なことがある。それは、協力工場で構成される「ヤナセ・ザ・ボディショップ・ネットワーク」に加盟するための厳しい条件をクリアできるのか? というところだ。 特に注目すべきは「コンプライアンスに関する項目」の中の以下2点である。 ・道路運送車両法に定める「認証工場」道路運送車両法に定める「認証工場」または「指定工場」であること。 ・官公庁に対する諸手続を加盟工場、自らの責任で行い、消防法などの公的基準を満足していること。 実はビッグモーターではこの数か月の間に本社のある多摩店(東京都)/つくば店(茨城県)/古賀店(福岡県)などの板金工場を閉鎖している。ビックモーターの板金工場は大手損保の入庫紹介が停止した2022年6月以降、入庫が激減。毎月1億5000万円ほどの赤字を出し続けており、売り上げ激減による工場閉鎖や人員削減も相次いだ。 しかし、2月に閉鎖された多摩/つくば/古賀の3工場の閉鎖については売り上げ激減と共に別の理由もある。 それは、消防法などの法令違反の疑いがあるということだ。詳細は明かされていないが、それが真実ならヤナセのネットワークには当然加盟できない。ということで、いったん閉鎖し、法令関係への対応を済ませたあと再び板金塗装工場として再開するのではないかと予想される。 多摩店の工場は2月半ばに閉鎖されるという話を聞いていたので、閉鎖前の2月上旬に行ってみた。板金工場はしっかり稼働しており、駐車場には修理待ちのクルマ? で埋め尽くされており、明るく清潔な工場の中では何人かが修理作業を行っていた。 その後、3月4日に訪れた際には店のほうは営業時間内であったが、板金工場は完全に閉鎖されていた。シャッターを下ろされ、駐車場には一台もクルマが停まっていなかった。 ビックモーターの板金工場は、設備は素晴らしいものがあるが、実際に現在は人員からして全く足りてない。また中には非常に高レベルの板金塗装技術を持った作業員も残っていると聞くが、全国展開する工場で高品質の修理を提供するには圧倒的に数が足りていない。 新会社となって大々的に板金塗装の作業員を募集すると思われるが、そこからヤナセの要求を満たす高品質な作業がおこなわれるまでには相当厳しいトレーニング、コンプライアンスの徹底含めて多くの高いハードルと向き合うことになりそうだ。
加藤久美子(執筆/撮影) AUTOCAR JAPAN(編集)