【独自】地に落ちたビッグモーター板金工場 世界最高品質「ヤナセ」の仕事を請け負えるのか?
ビックモーター板金工場はテュフ認証を取得し、伊藤忠も高評価していた
さて、話を伊藤忠の買収に戻そう。伊藤忠は全国各地のビッグモーターの施設、資産などを評価するデューデリジェンスを詳細に行ってきてこのたびの「買収正式決定」となったわけであるが、これまで筆者が聞いてきた中では伊藤忠はビッグモーターの板金工場にとくに強い関心を寄せていたという。 筆者もビッグモーター板金工場のハード面におけるレベルの高さについてはいくつかのメディアでコメントしている。 ビッグモーターの板金工場は現在本社機能がある多摩店を筆頭に、2019年にテュフ・ラインランド・ジャパン(TRJ)のゴールド認証を受けており、そのことはビッグモーターが珍しくメディアに対して積極的に公表していた。 ビッグモーターの広報部門は騒動後の2023年8月にやっと設置されたわけで、それまでメディアからの問い合わせには基本応じていなかった。しかし、唯一この「テュフ認証」だけは大々的な発表を行ってきたのである。 2019年4月8日のリリースでは、第一弾としてフラッグシップ工場の「多摩店」が非常に高レベルの修理ができる工場に対する「ゴールド認証」(スチール限定)を取得したことを公表。その後、同年6月27日には全29工場がTRJのゴールド認証を取得しており共同記者会見まで開いていた。 ちなみに、TRJ認証のための申請作業については、非常に煩雑な手続きが必要でビッグモーター元社員いわく「認証作業はどこも損保の社員が頑張ってやってましたよ」とのことである。当時はすさまじい数の修理を請け負っていた時期ゆえ、ビッグモーターの社員が認証作業に関わることはほとんどなかったのだ。
ヤナセの板金修理が世界最高といわれる理由
ちなみにヤナセの板金工場もテュフ認証を受けており、こちらは板金塗装工場として日本で初めて世界最高水準のプラチナ認証を2016年11月1日に取得。 2017年10月11日には6拠点がテュフ・ラインランド板金塗装工場認証基準の「プラチナ」/2拠点が「ゴールド」の認証を取得しており、直営9拠点すべて認証取得となっている。なお、テュフ認証は2年ごとに更新が必要で、ヤナセはきちんと認証の更新をしているがビックモーターは2019年以来、更新はしていない模様。 ヤナセの板金修理の品質は国内最高、いや世界最高水準にあるとされる。 全国9か所のコントロールセンターを中心に、全国約300か所の協力工場をネットワーク化。独自のWebシステムとネットワークで、事故車修理において、自動車メーカーが提供している車両本来の性能復元を目指し高品質なサービスを提供。 ヤナセグループに入庫する車両だけではなく、損保各社や各ディーラー各社からの修理依頼にも対応し、輸入車を中心に年間6万台以上の修理実績がある。 その証拠にヤナセオートシステムズでは、ヤナセが正規代理店となっているメルセデス・ベンツやBMW、GMなどのブランドの他にフェラーリ、ランボルギーニ、テスラなどの「メーカー認定工場資格」を取得している。板金塗装といっても単に外側を綺麗に仕上げればいいというものではない。本来持つ走行性能を100%復元する作業も必須なのである。