「鼻をつまんで投票する回数」の限界を超えた 有権者人生で初めて国政選挙を「棄権」 北原みのり
政治家を選ぶとは、私の声を代弁してくれる人を選ぶことである。私たちの代表を選ぶ行為である。でも、今の政治家に、今の政党に「私の声の代表」はいるのだろうか。女の声を代弁する人はいるのだろうか。その不信に蓋をして、選挙というお祭りごとの喧噪の中で自分の痛みや不満を押し込め、無理やり鼻をつまんで投票する。そういう繰り返しに、私自身がしっぺ返しを受けてきたのではないか。そんな思いになっている。本当の意味で女性の権利を考える政党が、この国には、まだ生まれていないのではないか。 だからこそ、この人は私の声の代表者だ、と信じられるような候補者から育てていく、というのが正しい政治との関わり方なのかもしれない。政党が何らかの思惑で並べる候補者リストから、結婚式の引き出物カタログをチェックするかのように、「ぜんぜんほしくないけど、もらわなくちゃ失礼だから」と無理矢理選ぶのではなく、そもそも政治家をきちんと育てて、候補者から一緒に選ぶような方向にしなければ、政治と市民との距離はますます開いてしまうだろう。 今回、諦めなかった投票者たちが、現実を変えた。投票が現実を変える。そのことは重々わかっているけれど、それでも有権者の半数近くの棄権の背後には、私のような「行けなかった」という思いも数パーセントはあるはずだ。政治への無関心「だけ」が問題なのではなく、「政治家の質」の問題も大きいことを、今回当選した政治家たちにはわかってほしい。
北原みのり