「鼻をつまんで投票する回数」の限界を超えた 有権者人生で初めて国政選挙を「棄権」 北原みのり
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は総選挙について。 * * * 「安倍政権」の残滓を徹底的に消す。 有権者のそんな意思を感じる、衆議院議員選挙の結果になった。 「政治とカネ」が焦点とされた選挙で、「ルールを守る」と当たり前のことを言うしかなかった石破さんの自民党に対し、「政権交代こそが最大の政治改革」と声をあげた野田さんの立憲民主党が大幅に議席を増やしたことで、政治はどうしたって動かざるを得なくなるだろう。 これでようやく、「フツーの国」になるのかもしれない。議論が深まらないまま大切なことが一方的に決められていく異常事態から。堂々と嘘をついても守られる国会議員を眺めているしかないという異常事態から。 それにしても投票率は低かった。戦後3番目に低く、小選挙区で53.85%だ。前回の衆議院議員選挙よりも低く、20代前半にいたっては3割しか投票していない。とはいえ、そもそも20代の投票率の低さは1993年からずっと3割~4割である。90年代の若者も中年になった2020年代には投票していることを考えれば、「この国の若者」の政治離れは今に始まったことではない。問題は若者だけでなく、全世代を通して投票への意欲が薄れてしまっているということなのかもしれない。「政治への無関心」というよりも、「投票への意欲減」というような。 ……と、ここまで評論家のように今回の選挙結果についてペラペラと書いているが、そして怒られるかもしれない、呆れられるかもしれないとドキドキしながら正直に書くが、私は今回、選挙に行かなかった。国政選挙に行かなかったのは、34年の有権者人生で初めてである。 投票したくても権利のない人のことを考えてみろよ? あ? 一票の大切さがわからないのか? あ? などと心の中で暴れる私を責める私もいた。せめて投票所までは行けないの? っていうか行けよ! と分裂気味に自分の心の中で叫ぶ人もいた。でも、本当に入れたい人も入れたい政党もなかったのである。棄権しかなかったのだ。