“ディズニーいちの最低男”『アナ雪』ハンス、実は超不憫だった 13番目の王子が背負っていたアレコレとは
■周りの心を映す“鏡”なハンス、その本心は?
アナとハンスのデュエットナンバー「とびら開けて」では、「私たちはよく似てるね」「僕と同じじゃないか!」など、2人が「似ている」ことがお互いを運命の相手として強く印象付けている。結局、ハンスは王になるためにアナに近づいたわけなので、「似ている」ではなく「合わせてやってる」だったのだろうが、果たして本当にそうだろうか? と思ってしまう。 アナもハンスも、姉・兄から無視されて育ち、自分が王になることはないんだという思いを抱え生きてきた。言ってみれば、自分のことをいずれ王になる姉や兄の“おまけ”のような存在だと思ってきただろう。これは、まぎれもなく「同じじゃないか」である。とはいえいくら生い立ちが似ていても、2人の本質は全く違うものとなっていたわけだが。 『アナ雪』のもととなったのは、アンデルセンの童話『雪の女王』だ。ハンスはその中に出てくる「悪魔の鏡」がモデルとなっていることが監督のジェニファー・リーにより明かされている。13番目の王子として、親や兄たちの機嫌を伺いながら生きてきたであろうハンスは、いつしか人の心情を鏡のように映す存在になっていた。 愛を欲していたアナにはかりそめの愛を、突然の冬に怯えるアレンデール国民には毛布を、そして自分の力をコントロールできず絶望するエルサにはさらなる絶望を。そしていよいよアナを裏切るその瞬間、窓ガラスにはハンス自身の姿が映るのだ。人の心を映し続け、気づいた時にはすっかり悪人ヅラになっていたハンス…なんだか可哀想になってこないか。
■禁断の「もし」…ハンス更生ルートを探る
人々の心を映しながら、兄たちに認められようともがいたハンス。“本当の彼”は一体どんな男だったのかは、ついぞ分かることはない。物語に「もし」はないが、もし順調にアナと結婚して、兄たちのもとを離れてアレンデールで暮らしていたら、男としての抑圧もその背から下ろせたかもしれないし、人の心を映すことも辞められたかもしれない。そして、本来の自分を取り戻せたかも…なんて思ってしまう。 すでに結構きつめな運命を背負ったハンスだが、物語の外に目を向ければ、ディズニーからは“ディズニー的展開の脱却”という役割も背負わされている。王子と一目で恋に落ち、姫はいつまでも幸せに暮らしました…という、ディズニーがこれまで作り上げた恋と愛のイメージをぶち壊したのもまたハンスである。 いろいろと背負わされた結果、“史上最低”とまで言われるヴィランに身を落としたハンス。もちろんエルサに剣を振るったのは事実なので最低男確定であることは変えられないが、多少…情状酌量の余地はあったような気もしてくる。今夜の放送では、ハンスにも少し思いを馳せてあげてほしい。(文:小島萌寧) 映画『アナと雪の女王』は、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて11月29日21時放送。