“ディズニーいちの最低男”『アナ雪』ハンス、実は超不憫だった 13番目の王子が背負っていたアレコレとは
本日、『金曜ロードショー』にて放送される映画『アナと雪の女王』。劇場公開から10年が経つも、昨年は香港ディズニーランド、今年は東京ディズニーシーに『アナ雪』エリアがオープンし大人気となるなど、いまだ多くの人から愛されている名作だ。『アナ雪』といえば、それまでのディズニー映画の常識をいくつも覆した作品。特に語りたいのが、本作のヴィランズ、ハンスだ。“ディズニー史上最低”とまで言われることもある彼だが、実はかなり悲哀にあふれたキャラクター。今回は、“いろんな意味で不憫すぎたハンス王子”について語ってみたい。(この記事はネタバレを含みます。ご了承の上お読みください) 【写真】クソ男? 可哀想なヤツ? 『アナ雪』ヴィランのハンス王子 さかのぼること2014年。筆者は映画館で『アナ雪』を見ていた。そしてアナとハンスが歌うラブラブソング「とびら開けて」で大いにキュンキュンし、その約1時間後にアナと共にこのクソもみあげ男に絶望したのである。しかし10年経った今、この男のことを改めて考えると、どうも恨み切れなくなってくる。 北方の美しい小国、アレンデール王国には2人の美しい王女がいた。この年、姉のエルサ王女が成人を迎え、戴冠式が開かれる。そこに招かれたのが、サザンアイルズ王国の第13番目の王子、ハンスだ。エルサの妹であるアナ王女とひょんなことから心を通わせ、会ったばかりで婚約を交わすハンス。しかしこれはすべてハンスのたくらみで、自身がアレンデールの王になるための策略だったのだ。 ■ハンスは「男の抑圧」の被害者? ハンスには12人の兄がいて、いじめられたり無視されたりしてきた。しかしおそらくそれは彼自身に問題があったからではない。初対面でアナがベタ惚れしてしまうほどハンサムで品もあり、エルサが作り出した雪の怪物を1人で倒すほど剣の腕も立つ、なんというか非常に“王子っぽい”男。王となる素質はあるものの、彼が育ったサザンアイルズの王家では、王位に近いほど優遇される環境であり、ハンス自身も王位から遠い自分自身に価値を見いだせていなかったのではないか。 ハンスはつまり、家父長制だとか出世争いだとか、旧時代的な男性としての抑圧を背負わされたキャラクターだった。いくら自分が優れていたとしても、地位を得られなければ自分の価値はない。そんな意識を植え付けられて、結局間違った方向に進んでしまった哀れな1人の普通の男だ。 最終的にアナと結ばれるクリストフは、ハンスが背負う男の抑圧から解放された存在だ。誰ともなれ合わず、別に偉くはないけど自分のやりたいことをして、気ままに生きる男。そして真実の愛も知る。もしかしたらハンスが真に手に入れたかったのは、王位よりもクリストフ的暮しだったのかもしれない。きっと彼自身がそれに気づくことはないのが悲しいところだが。