欧州で原発の運転停止相次ぐ、再生可能エネルギー急増で需要低下
(ブルームバーグ): 再生可能エネルギーの促進が、欧州の原子力発電業界に追い打ちをかけている。
化石燃料に依存しない電力の生産はかつてないほど急がれ、欧州の一部では依然として原発を電力政策の中核に据えている。だが、再生可能エネルギーの急増と電力価格の低下で、原発の運転にしわ寄せが及んでいる。
今後さらに厳しい時期が待ち受けている兆しもある。エネルギー危機以来、需要は十分に回復せず、風力や太陽光の発電量は増加の一途をたどる。これに押され、発電電力量に占める原子力と石炭火力のシェアはいずれも低下している。
エネルギー・電力市場分析会社ストームジオ・ネナのシニアアナリスト、シガード・ペデルセン・リエ氏は「太陽光と風力に極めて不利な状況が長期間続くか、強い熱波がない限り、現在の電力価格では従来型のベースロード電源は苦しいだろう」と指摘した。
フランスや英国などの国は地球温暖化対策の重要な要素として原子力技術を位置づけ、原発新設に巨額の資金を投じる計画だ。昨年末にドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、仏英のほか米国や日本、韓国、アラブ首長国連邦(UAE)など20余りの国が、2050年までに世界の原子力発電を3倍に増やすことを呼び掛けた。
それでも長期的に、原発はますます締め出されかねない警戒すべき兆しがある。
フランス電力(EDF)は点検や修理のため長期にわたり運転を停止していた複数の原発を再稼働させつつあったが、既に出力の低下や運転の休止、停止期間の延長に迫られている。週末には電力価格がマイナスとなる事態が発生、6カ所の原発で運転を停止した。
スペインの電力価格は5日、2013年以来の水準に低下した。同国の電力取引価格は数週間にわたりゼロをかろうじて上回る水準が続き、アスコ原発1号機と2号機は過去5週間に通常ベースで出力を下げている。北欧では、原発の出力低下はより頻繁だ。