【対談】令和ロマンくるまxLINEヤフー会長「大喜利力は問題解決力」
「情報爆発の時代」にのみ込まれないために
■「情報爆発の時代」にのみ込まれないために くるま:次は僕から聞いていいですか。「繁栄」はどうしてですか。 川邊:24年は世界的な選挙イヤーで、ロシアから始まってイタリア、ドイツ、日本、アメリカと選挙がありました。指導者の顔ぶれが変わって明るくなったのかといえば、そうでもない。むしろ新しい秩序がどうなるのかと不安を感じている人は多く、25年は暗いムードに覆われそうです。 ただ、冷静に考えたら暗くなる必要はないんです。それを教えてくれたのが『繁栄─明日を切り拓くための人類10万年史─』(マット・リドレー著)という本でした。この本を読むと、短期的にはいろいろあっても、人類はきちんと前に進んで繁栄してきていることがわかります。 大切なのは数字で見ること。幸せかどうかは主観だからムードに引きずられがちですが、例えば飢餓で苦しむ人は減っているし、トイレの普及率は上がっている。ファクトを見れば、人類はやばいくらいに繁栄し続けているんです。 くるま:ファクトの話でいえば、どのファクトを選ぶかがけっこう大事な気がしています。僕が子どものころは情報が今より少なくて、知的好奇心をもってどんどん情報を取ったやつが賢くなっていきました。でも、今は情報が多すぎて、ファクトを集めれば集めるほど何から考えていいのかわからなくなって、身動きが取れなくなる。 僕はふたつめのキーワードを「決めつけ」にしたんですが、「これが好きだ」と自分の世界を区切ってファクトを見ないと、しんどいだろうなと思ったからです。 川邊:くるまさんの場合は、それが漫才だった。 くるま:はい。僕が芸人になったときはYouTuberが花開いた時代で、芸人にもさまざまな選択肢ができたんです。でも、いろいろ手を出してパンクしてるやつが多かった。それを見て、自分たちは漫才だけやろうと逃げてきた感じですね。 決めつけると視野が狭くなると思われるかもしれませんが、「絞り込んだから見えてくる世界」もある。例えば漫才は大きな会場でやるとウケにくい。本当は声をパキッと届けたいのですが、音響の世界は音楽の専門家ばかりで、あえて響かせてしまうからです。ただ、今年のオードリーさんの東京ドームライブは革命的に漫才向きの音響だったらしく、僕もそこにアプローチしたくなりました。漫才、なかでもライブにこだわっているからこそ、音響にも関心が広がった。絞りこむからこそリアルな選択肢が出てくるんだと思います。 川邊:僕はふたつめのキーワードに「瞑想」をあげましたが、言いたいことはほぼ同じです。ブッダは人間の欲とか社会のいろいろなものから解脱するための修行法として、瞑想して「空」になることを推奨しました。インターネットビジネスをやっている僕が言っていいのかわからないけれど、情報爆発でフェイクも含めて情報が流れ込んでくる現代は、瞑想のように外と遮断する機会をつくらないと、どうにも生きにくい。 くるま:川邊さんは瞑想しているんですか。 川邊:いや、実はぜんぜんしていなくて……。 くるま:えっ、ここは突っ込むところ?(笑) 川邊:ははは(笑)。ただ、最近は千葉の館山で暮らしてハンターをします。イノシシを取って解体して食べる生活をしていると、忙しくてSNSを見る時間もない。期せずして情報社会から遮断されているからいいかなと。 くるま:情報ってデトックスできないんですよね。一度知ると老廃物みたいに体外に出せないから、最初から完全遮断する生活はいいのかもしれませんね。