富士山登山鉄道、反対派が大規模フォーラムなどで攻勢 推進の県は中間報告遅れで停滞
山梨県の長崎幸太郎知事が推進する富士山の麓から5合目を結ぶ有料道路「富士スバルライン」に次世代路面電車(LRT)を通す「富士山登山鉄道構想」を巡り、反対派が攻勢を強めている。富士北麓地域の反対団体に加え、甲州市などを中心とした新たな反対グループが発足。10月末には個人を含めこれらの反対派が一堂に会する大規模フォーラムが開催される。一方、県は専門家による事業可能性を証明する中間報告の取りまとめが大きく遅れ、推進に向けた動きは停滞気味で構想にブレーキがかかったままだ。 【写真】山梨県が提案するLRTによる富士山登山鉄道のイメージ ■署名は6万6千人分 「登山鉄道反対の署名は6万6千人に及んでいる。運動が中だるみしないよう新たなアクションで示す」 富士吉田市の堀内茂市長は10月31日に市内で登山鉄道構想に反対する複数の団体が一堂に会するフォーラムの意義を強調する。 富士北麓地域を中心に神社関係者、山小屋関係者らがつくる「富士山登山鉄道に反対する会」は、堀内市長のいう反対署名を対面での書き込み、オンラインを含めて9月中旬までに6万6千人分を集めた。同時に地元民放テレビを使った意見広告のCMを放映した。反対する会としては、富士登山鉄道の賛否が「県と地元だけの対立」ととらえられがちな面もある中で、世界文化遺産で日本を象徴する「霊峰富士山」の尊厳を登山鉄道が傷つけるとして、反対活動を国内外に幅広く展開したいとしている。 こういった動きに呼応するように、富士北麓地域ではない甲府盆地内に位置する甲州市や笛吹市などを中心とした「富士山登山鉄道建設反対国民会議」が発足し、計画撤回の陳情書を県に提出した。 ■EVバス試験運行へ また、登山鉄道反対を決議した富士吉田市議会の議員有志が、JR甲府駅周辺で「登山鉄道は必要ない」と街宣活動を展開。構想を推進する山梨県庁前でもビラを配るなど、推進側のひざ元で気勢をあげた。 10月31日のフォーラムはさまざまな形態で展開してきた各団体の活動状況を報告し運動を盛り上げ、一本化につなげる狙いがある。 富士吉田市は麓から富士山5合目への新しいアクセス手段として、LRTではなく、自動運転の電気自動車(EV)型のバスの走行実験に取り組む。すでに自動運転に向けたルートデータの確認作業を行っているが、近く自動運転EVバスの試験運行を予定し、実現性をアピールする。