富士山登山鉄道、反対派が大規模フォーラムなどで攻勢 推進の県は中間報告遅れで停滞
■マンパワー不足も誤算
一方、令和6年度中に登山鉄道構想を計画レベルまでの引き上げを目指していた県には誤算があった。まず昨年立ち上げた専門家による事業化検討会の中間報告の遅れだ。
当初は令和5年度末(6年3月末)までとしていたが、それを断念した時点で担当である和泉正剛・富士山登山鉄道推進監(現・富士山保全・観光エコシステム推進統括官)は「遅くとも6月までの公表を目指す」と明言。だが6月末になっても公表されず、長崎知事も7月18日の定例記者会見で公表は「まだ未定」とした。登山鉄道の技術的な実現性などを示せない状態が続く。
続く誤算がマンパワー不足だ。今年4月発足の富士山保全・観光エコシステム推進グループには登山鉄道推進と同時に富士山登山対策の担務もある。山梨県では今夏に5合目にゲートを設ける初の富士山登山規制を実施したが、事前の関係団体との調整や運用方法の確立、7月1日の開山後は担当者自らが5合目での軽装登山者らへの注意を呼びかけるなど忙殺された。閉山後も来年の規制に向け、地元や静岡県、国との調整に時間がとられ、登山鉄道にまで手が回らないのが実情だ。長崎氏も「そんなに大人数でない」と語り、マンパワー不足を認めざるを得ない状況だ。
長崎氏は、反対派に対して直接説明する考えを示しており、今後、相互が歩み寄れるかに注目が集まる。(平尾孝)
■富士山登山鉄道構想
富士山の麓と5合目を結ぶ有料道路の富士スバルライン上に軌道を敷設し、次世代型路面電車(LRT)を運行させ、同時に一般車両の通行を禁止することでオーバーツーリズム(観光公害)対策として来訪者コントロールを図る構想。雪に強い特性を生かし、年間を通じて運行させ、5合目の通年観光につなげる狙いもある。一方で鉄道敷設は富士山の自然破壊につながることや、崩れやすい土壌のうえ、雪崩や土砂崩れが頻発する中で、実現は困難だとして反対の声があがっている。