<城氏が語る>なぜハリルJは無得点に終わったのか。
ワールドカップのアジア予選の開幕戦は、例えホームで格下チームが相手でも特別な緊張感があって難しい試合になる。私も経験をしたから簡単な試合でないことは理解しているが、それを割り引いても勝たねばならない相手だった。「冷静さ」、「判断力」、「連携」。23本もシュートを打ちながらも、シンガポールのゴールをこじあけるために足りなかったものは、この3つだ。 9人のディフェンダーで、中を絞って守る相手に対して、真ん中を強引に攻めていく攻撃は、自滅行為だ。なぜ、もっとサイドを使わなかったのか。ピッチサイドで、ハリルホジッチ監督は、「ワイドに! 」とジェスチャーで、サイドを使うことを指示していたが、チームに徹底されていなかった。外を切れ込んで、揺さぶり、クロスを放り込むことで、相手を中へのカバーリングに動かさないと、ディフェンスは、ずれていかない。長友が、アクシデントで先発を外れたが、長友、内田が両サイドにいれば、彼らの高い判断力と1対1の強さで、また展開は変わっていたのかもしれない。長友に代わって左のサイドバックで先発した太田もクロスは一級品だが、まだ突破力に欠ける。酒井にしても、こういう展開で、局面を打開する力は不足していた。 「丁寧にやりたい」「負けられない」という意識が強かったのか、パスワークの距離は近く、サイドチェンジについても、ほとんどなかった。前半のいい時間帯の決定的なチャンスに先取点を奪えなかったことで、ますます焦りが生まれ、思考が停止してしまったかのように戦術が偏っていた。長谷部が、ドリブルから相手のディフェンスを動かしたシーンがあったが、もっとチャレンジをして良かったと思う。 後半16分、ハリルホジッチ監督は、香川に代えて大迫を投入。岡崎のワントップから、大迫とのツートップにシステムを動かしてきた。おそらく大迫が体を張ることで、2人でボールを押さえ、ギャップを作り、中盤の飛び出しを図ろうと考えたのだろう。しかし点が取れないことで冷静さを欠いた本田までが前へ出てしまったことで、ワンラインとなってしまい、ギャップを作ることができなかった。