ノーベル平和賞受賞、被団協・田中熙巳さん「核兵器は一発たりとも持ってはいけない」…記念講演で国際社会に訴え
【オスロ=梁田真樹子】今年のノーベル平和賞授賞式が10日、ノルウェーの首都オスロで開かれた。被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が受賞した。長崎で被爆した被団協代表委員の田中熙巳(てるみ)さん(92)が記念講演し、「核兵器は一発たりとも持ってはいけない」と強調し、核廃絶に向けた取り組みを国際社会に訴えかけた。 【動画】被団協、ノーベル平和賞を受賞
日本からの平和賞受賞は、非核三原則を提唱した1974年の佐藤栄作元首相以来で、2例目となる。
オスロ市庁舎での授賞式には、広島・長崎の被爆者に加え、被爆2世や3世らで作る被団協の代表団30人が出席。田中熙巳さんのほか、被団協代表委員で長崎で被爆した田中重光さん(84)と、広島で被爆した箕牧(みまき)智之さん(82)が、ノルウェーのノーベル賞委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長からメダルと証書を授与された。
記念講演で田中熙巳さんは「10年先には直接の体験者として証言できるのは数人になるかもしれない」と述べ、核廃絶に向けた運動を若い世代が引き継いでくれるよう期待感を示した。自身の壮絶な被爆体験や、核廃絶や被爆者への日本政府による補償を求めて1956年に結成された被団協の活動を振り返った。
ウクライナ侵略を続けるロシアが「核の威嚇」を繰り返していることなどに触れながら、「(核兵器を二度と使ってはならないとの)『核のタブー』が壊されようとしていることに、悔しさと憤りを覚える」と訴えた。
フリドネス氏は、被団協への授賞理由について、「核兵器が使われてはならない理由を身をもって立証してきた」と説明。「核のタブーを築き上げていくにあたり、被団協の貢献は他に類をみないものだった」と功績をたたえた。
授賞式の終了後は、市内のホテルで、ノルウェーのホーコン皇太子夫妻やヨーナス・ガール・ストーレ首相らが出席して晩さん会が催される。11日は、代表団に加わった被爆者がオスロ市内の高校生や大学生に被爆体験を語る。