鳩山由紀夫氏は政倫審を拒否していた…「民主党政権の悪夢」こそが岸田首相の守護神である
既得権の守護者だった民主党
立憲民主党の前身、民主党は09年9月、鳩山由紀夫政権を発足させた。恥ずかしながら不肖この私も民主党に1票を投じた。 日本が変わる。そんな高揚感が早々と裏切られることになった。 鳩山政権の官房長官、平野博文は09年9月16日、鳩山氏の首相就任会見からフリーランスのジャーナリストやインターネットメディアの記者を締め出した。内閣記者会は平野氏に「新聞、テレビなどの既存メディアを敵に回すと、政権が長く持たない」と持ちかけ、平野氏はこれに呼応して「『記者クラブ開放は俺が潰す』とまで言った」と週刊朝日の山口一臣氏が自身のブログで明かしている。 何のことはない。「既得権益」を打ち壊すために国民が一票を投じた民主党政権は、自民党政権以上に既得権益の守護者だったわけである。 政権を追われた自民党の最後の首相、麻生太郎氏が「連日、高級ホテルのバーに通っていた」とか「ホッケの煮つけ」発言を肴に「ボンボン育ちの麻生太郎は、ホッケの食べ方も知らない」と連日、実体のよくわからぬ「庶民感覚」とやらを盾に麻生首相を攻撃していた既存メディアは、鳩山政権が発足すると「連日、モスバーガーに通っている」と持ち上げた。 しかし、鳩山氏とてホテル・ニューオータニの「千羽鶴」などの高級店には行っていた。高級ホテルの日本料理店や「なだ万」などの高級料亭に通っていたのは、菅直人氏も同じだ。だが、こうした動向を麻生氏の時のようには既存メディアは叩かなかった。
鳩山首相の虚偽記載は3億5000万円、贈与は9億円
僕はといえば、09年当時は国税担当記者だった。政権交代直前、この年の7月、民主党代表だった鳩山氏には実母からの贈与を第三者の個人献金であると仮装した疑惑が持ち上がっていた。 鳩山氏の資金管理団体「友愛政経懇話会」が「個人献金」と届け出たなかに、すでに死亡した人の名義が含まれていたことが発覚し、パーティー券収入でも同様の虚偽記載が見つかり、08年までの5年間で虚偽記載は約3億5000万円にものぼった。 鳩山氏は母親から月1500万円もの贈与を受け、総額は5年間で9億円にも上ったというのに「知らなかった」と国会で答弁した。「贈与であれば、これは脱税になるな」と日々、緊張したことを思い出すが、東京地検特捜部は鳩山首相本人を聴取することもなく、当時の公設第一秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕、政策秘書を同罪で略式起訴したものの、鳩山首相本人は罪に問われなかった。 検察審査会は「不起訴相当」としたものの、母親からの資金提供を知らなかったとは「素朴な国民感情として考え難い」と付言した。そのうえで「政治資金規正法は政治家に都合の良い規定になっている」などと異例の言及をし、改正を促している。 東京国税局はこの問題に関し、鳩山氏を税務調査したが、「悪質な仮装隠ぺいはなかった」として、調査を打ち切った。 故意の無申告による脱税は5年以下の懲役または500万円以下の罰金という(所得税法238条3項)決して軽くはない罰則がある。 月1500万円の贈与を「知らなかった」と言い切る鳩山首相の金満ぶりにも呆れるほかないが、脱税に問わなかった東京国税局の処分は今も納得できない。 鳩山氏は罪に問われることこそなかったが、発足時は72・0%もあった支持率(共同通信調べ)は、瞬く間に急降下し、内閣発足後3カ月後の12月には50%を割り込んだ。結局、10年5月末時点で19・1%にまで落ち込み、10年6月4日、総辞職した。