Microsoft、アジアで4拠点目となる研究開発拠点を東京都内に開設
米Microsoftは18日、新たな研究開発拠点となるMicrosoft Research Asia - Tokyo(MSR Asia - Tokyo)を都内に設立したと発表した。グローバルで展開するMicrosoft Researchの中で13カ所目の拠点となり、アジアでは4拠点目となる。 【画像】2025年にはシンガポールと香港にも拠点が設けられる オープニングセレモニーで冒頭のあいさつに立った、日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長の津坂美樹氏は、「MSR Asia - Tokyoの開設は、今年4月に表明していた取り組みのひとつ。ここではAIイノベーションを中心とした研究を行い、高齢化や労働人口の減少といった日本特有の社会課題を解決するソリューションを生み出し、日本の成長と日本の未来に貢献したいと考えている」と語った。 MSR Asiaでマネージングディレクターを務めるリドン・ジョウ(Lidong Zhou)氏は、「最高のイノベーションは、多様なアイデア、そして多様な地域や人から生まれる。MSRがグローバルで拠点の拡大を推進してきたのもそのためだ。今回アジア太平洋地域の拠点をさらに拡大したことで、この地域で協力の輪を形成し、変化をもたらしていきたい」と述べている。 MSR Asia - Tokyoのシニアディレクターとして同拠点の責任者に就任したのは、松下康之氏だ。松下氏は、2003年から2015年までマイクロソフトで研究者として勤務し、その後2024年まで大阪大学の教授としてコンピュータビジョン講座を主催していた。 松下氏によると、MSR Asia - Tokyoでは主に、Embodied AI、Societal AI、ウェルビーイング&ニューロサイエンス、インダストリーイノベーションをテーマとした研究を行うという。「まずはEmbodied AIに注力し、その後ほかの分野にも研究を広げていく。テクノロジーが人類の最善の利益となるよう努めたい」と松下氏はいう。 Embodied AIの分野では、複雑なタスクをこなし、物理的および仮想的な環境での理解や対話ができるインテリジェントシステムの開発に取り組む。Societal AIに関しては、AIが社会に及ぼす影響を探求し、技術が人類の利益に役立つよう推進する。ウェルビーイング&ニューロサイエンスの分野では、ニューロサイエンスからのインスピレーションを得て、人間とAIのインターフェイスを再構築し、AIをウェルビーイング向上のために活用する。インダストリーイノベーションにおいては、学際的かつ境界を越えた研究を通じて現実のニーズを理解し、産業パートナーと協力してイノベーションを促進する。 松下氏は、東京という場所には戦略的な意味があると語る。「東京は、イノベーションと協力のハブとなる場だ。ここに拠点を設けることで、大学や研究機関、業界リーダーとのより緊密なパートナーシップを育てたい」と松下氏。日本では、東京大学、慶應義塾大学、産業技術総合研究所、理化学研究所、国立情報学研究所、川崎重工業、日産自動車、本田技術研究所などとのパートナーシップを確立している。 MSR Asia - Tokyoでは、人材育成にも注力する。共同研究やインターンシップ、客員研究員プログラムなど、人材育成につながるさまざまなプログラムを実施する予定だ。 日本に拠点を置くことについて、松下氏は次のように語る。「日本特有の文化のひとつに『ものづくり』がある。この職人技はほかの国でも見られるが、日本では献身さや精密さ、そしてイノベーションを可能にする改善の精神が顕著だ。また、『調和』の文化も日本社会に深く根付いている。調和はバランスと相互尊重の重要性を強調するもので、共同研究には欠かせない。この独特の文化を生かして、研究におけるイノベーションと卓越性を育てたい」(松下氏) これを受け、Microsoft Corporation 最高技術責任者のケビン・スコット(Kevin Scott)氏は、「日本は最先端の技術を取り入れつつ、伝統を尊重し、最高レベルの技術と職人技を尊重している。AIによる影響を考えると、高度なAI研究に取り組む研究者にそのような感性があることは非常に重要だ」と述べた。 最後のあいさつに立ったMicrosoft Research プレジデントのピーター・リー(Peter Lee)氏は、「MSRは世界中の研究所で多くのことを学び、才能を吸収し、ユニークなアイデアや視点を取り込んでいる。同時に、現地経済の成長と発展、そして技術開発に貢献してきた実績もある。つまり共生してきたのだ。日本でも共生を実現できると信じてもらいたい」とコメントした上で、「せっかくなのでCopilotに最後のあいさつをしてもらおう」といい、その場でCopilotに「MSR Asia - Tokyo開設式の最後のあいさつをしてくれないか」と語りかけた。 するとCopilotは、「この研究所は、イノベーション、リサーチ、コラボレーションに対するマイクロソフトの真摯な取り組みを示すものです。マイクロソフトは、テクノロジーによって誰もがより多くのことを達成できる未来を築けることをうれしく思っています」とあいさつした。
クラウド Watch,藤本 京子