<映画評>新垣結衣の美しさ、作品を通じた優しさに涙不可避/『トワイライト ささらさや』
泣ける映画の多い2014年。中でも本作は本命という噂だった。「普段、どんなに泣ける映画って言われていても泣かないのに、この作品にはやられた」と、先に鑑賞した人から聞いていた。そう言われると、「泣くものか」と、少し構えて試写会に臨んだのだが……。まんまとやられてしまった。 加納朋子の小説『ささら さや』を映像化した本作。不思議な町「ささら」に暮らすサヤ(新垣結衣)は、夫のユウタロウ(大泉洋)を不慮の事故で亡くしてしまう。サヤと生まれたばかりの息子を残したことで、成仏しきれないユウタロウは、さまざまな人の体を借りて現れ、サヤを助けていく、というファンタジードラマ。女優の新垣結衣が自身初の母親役に挑んだだけでも話題性は十分だが、『60歳のラブレター』『神様のカルテ』などでヒューマンストーリーに定評のある深川栄洋監督が手がけただけあり、『泣ける作品』に仕上がっている。 頼りなかったシングルマザーのサヤは、周囲の人々に支えられて母親として少しずつ、少しずつ、成長していく。初々し過ぎる母親を演じた新垣の奮闘ぶりには、観客が「ささら」の町の人になった気持ちで、「がんばれ!」と声援を送りたくなる。 泣けるポイントはいくつかあるが、予告編でも紹介されている、ユウタロウの父親役の石橋凌に対し、「この子は私の母親です!」と、タンカをきるシーンは、中でも秀逸。この一連のシーンは、新垣の胸に抱かれた赤ちゃん目線で撮影していて、鑑賞する側に、自らが経験した母親の強さ、優しさによって守られてきた幼少時代を思い出してしまうのではないだろうか。家族への愛を改めて感じさせられてしまう。 それにしても、本作での新垣結衣の美しさには見入ってしまった。慣れない育児に疲れていても、子供を必死に守ろうとする母親は美しい。その凛とした姿は、これまでの新垣結衣よりもひと味もふた味も成長したように感じさせる。同世代に先駆けて、母親役を演じた新垣結衣の魅力が詰まった作品であると同時に、優しさに包まれ、心が温かくなる作品でもある。