【大学トレンド】増える「英語」で学ぶ医学部 国際化に対応した医師を目指す
米国医師国家試験にもチャレンジ
順調に医師への道を進んでいるように思える金本さんも、勉強には苦労したと言います。特に金本さんを悩ませた試験が、5年次に受験したUSMLE(米国医師国家試験)です。海外で医師として働くには原則、その国の医師免許が必要です。アメリカで医師として働くにはUSMLEの合格が必須となります。試験はすべて英語で行われ、高い医学知識が要求されるため、ハードルの高い試験です。金本さんはこの試験に挑戦しました*。 *USMLEの受験は希望者のみ。国際医療福祉大では希望者にセミナーを実施するなどのサポートをしている。 「入学前からUSMLEのことは意識していたので早くから準備すればよかったのですが、先延ばしにしてしまって……。5年次の臨床実習と並行しながらの受験勉強だったので、大変でしたが、USMLEを目指して一緒に頑張る同級生たちの存在が、モチベーションを高めてくれました。3段階の試験があるのですが、目標だった第1段階(STEP 1)は無事に合格できました」 現在は日本の医師国家試験へ向けて準備中だという金本さん。合格すれば、2024年春から研修医として働きます。 「研修先を決める際には、教育環境が整っていること、最先端の医療を取り入れていること、外国人の患者さんが多いことなどが決め手となりました。そして何より、見学に行った際、生き生きと働く先輩医師の姿が印象的でした。今の目標は、患者さんと信頼関係を築けるオールラウンドな内科医になることです。まず医師国家試験に向けて頑張りたいです」 アメリカの医師国家試験に合格して海外の病院で働くことにも興味はありますが、日本の試験に受かって研修医を経験したあとに改めて考えるそうです。
国際化に対応した医師を目指す
国際医療福祉大学医学部は新しいため、22年度の卒業生が初めて医師国家試験を受験。合格率99.2%と、全国でもトップクラスの結果を出しました。また、同学部は6年間でかかる学費が約1800万円と、私立大医学部の中で最も安く設定されていることでも注目を集めています。 ただ、大半の授業が英語で行われると聞くと、不安を感じる受験生もいるかもしれません。同大学医学教育統括センター長の矢野晴美教授は、英語による授業についてこう話します。 「本校は、『英文科に入学したみたい』と学生が話すくらい、英語そのものを学ぶ授業も多くありますが、レベル分けして授業を行い、英語が得意ではない学生も授業についていけるようになっています。また、『医学英語を学ぶ』ことに加えて、『医学を英語で学ぶ』という内容言語統合型学習(Content and Language Integrated Learning、CLIL)を採用しています。医学の土台の多くを英語で学ぶことで、国際化に対応した医師を目指せるでしょう」 英語力をつけるために、医学部独自のプログラムを推進する大学は増えています。千葉大学では、6年一貫の医学英語プログラム(English for Medical Purpose)を実施。杏林大学では、グローバルに活躍できる医師の育成を目的に海外研修プログラムを用意しています。医師として海外で活躍するのはもとより、インバウンド(訪日外国人)の数が増加している現状から、海外出身の患者を診察する際に必要なコミュニケーション能力を身につけるために「英語で学ぶ臨床推論」を医学部4年次に開講する兵庫医科大学のような例もあります。 言葉の壁がなくなれば、医師として助けられる人や力になれる場面が増えるでしょう。オールラウンドな医師になるために、英語を学ぶ医学部生は今後、ますます増えるかもしれません。
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