マツダ「MX-30 Rotary-EV」の走りは「ほんわか」、ロータリーエンジン搭載EVの実用性を1200km走破して改めて検証
■ 「ブーン」という振動音に慣れは必要 電池の残量(SOC:ステート・オブ・チャージ)が50~100%では、ノーマルモードでもEV走行が基本となり、ロータリーエンジンの存在をドライバーは実感しない。 高速道路の進入路などでアクセルを多めに踏んだ際、ロータリーエンジンが稼働するが外乱が大きいために音や振動はあまり感じない。 それが、SOCが50%を少し切ったあたりから、高速道路で一定速度で走行したり、また一般路で通常走行していると、「ブーン」といった一定の音で発電機としてロータリーエンジンが稼働する。システムがSOC 50%をキープしようとして発電を行う指令を出す。 高速道路で時速80km以上であっても、このロータリーエンジンの音と振動が気になる人もいるだろう。 また、一般路での場合、その音と振動の存在感は増す。 けっして耳障りな音という印象はないが、乗る人によっては「慣れ」が必要だと思う。 そのため、理想的には、一般路を主体とする日常ドライブでは自宅での基礎充電や、移動先での目的地充電を行うPHEVとして使うことが、コスパ的にも音・振動対策としても有効だろう。 そして、電力の消費量が多い高速道路など速度域が高い走行時は、ロータリーエンジンのサポートを受けることになる。
■ 2ローター化もあり ロータリーエンジンはその機構上、1ローターでは振動やそれに伴う音が発生しやすい。新開発された8Cの場合、サイドハウジングのアルミ化などによるエンジンとしての軽量化や、組み立て工程におけるローターのバランスの最適化などによって、振動とそれに伴う音が先代モデルに比べて大幅に改善されている。 ただし、先代モデルの13B改良型「RENESIS」は2ローターだ。複数ローターを採用することで、振動を抑制する効果がありそれに伴う音も軽減されることが分かっている。 今後、発電機としてのロータリーエンジンについても、搭載スペースがある場合、2ローター化することで出力向上と音・振動対策を実現することが考えられる。 今回の約1200km走行では、宿泊先で普通充電(3kW)を1回、東北自動車道のサービスエリアでの急速充電(50kW)を1回、そして3回の給油(約70L)で、燃費はリッター16km台となった。 カタログ燃費は、WLTCモード(国際的な試験方法に基づくモード)でリッターあたり15.4kmだ。 発電機として復活したマツダの真骨頂、ロータリーエンジン。その進化について、今後も定点観測していきたい。 桃田 健史(ももた・けんじ) 日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。 ◎Wikipedia
桃田 健史