岐路に立つ被災地の「仮設商店街」 迫る退去期限、新設への移転進まず
東日本大震災から6年を迎えた被災地で、震災後に復興支援として建てられた「仮設商店街」の多くで設置期限が迫っています。 【写真】大川小、遺族と卒業生の6年 続く裁判と校舎保存と 独立行政法人の「中小企業基盤整備機構」(中小機構)が建設し、各自治体を通して被災した商店主などに無償で店舗を提供してきた仮設商店街は、岩手、宮城、福島など被災地に合わせて70か所。しかし、2017年2月末時点で閉鎖されたのはこのうち18か所で、残りの仮設商店街の多くも、この3月末から2年以内に退去・撤去の予定になっています。テナント料や集客への不安などの理由から新しい商業施設や常設店舗への移転は思うように進んでいません。
「仮設」から「新設」に移転する店舗はゼロ
福島県いわき市にある久之浜地区の商店街は、東日本大震災の地震と津波で全壊する被害を受けました。そんな久之浜にあって地元小学校の敷地を間借りしてる「浜風商店街」は、震災後で最初にオープンした仮設商店街。プレハブ1階建てで、2011年9月、食堂やスーパーマーケット、理容室、駄菓子屋さんなど、9店が集まって営業を始めました。「からすや食堂」の遠藤貴美さん(56)は、仮設商店街が地域のコミュニケーションの拠点だったと話します。 「この商店街は、地元の人も、地元以外の人も、本当にいろんな人たちが来てくれたんだよね。だから、来てくれた人たちには、気持ちよく帰ってもらえるようにって笑顔で迎えてきたんです。みんなここに集まって、お茶飲んで……。でも、このお店も一応3月いっぱいまで。4月からは元の場所に戻って営業することになってるけど、まだはっきりしてないの」 「浜風商店街」の退去期限は3月末の予定です。「からすや食堂」の新しい店舗も建築中ですが、建築業者の人手不足もあり、店舗が再オープンする日程が未だに決まってないのです。
久之浜では、この4月、かさ上げした沿岸に新しい商業施設「浜風きらら」が新設オープンする予定ですが、「浜風商店街」から移転する店は1軒もありません。商店主たちは口々に、経済的に条件が合わなかったと言います。 一足早く仮設店舗から卒業し、元の場所をかさ上げしてスーパー「はたや」を再建した遠藤利勝さん(52歳)は、経営が黒字になる見込みはまだ立たないと言います。 「あんまり考えても仕方ない。動いている方がいい。そう思って店を再建しました。でも、ご覧の通り、この近所で全壊した家は、まだほとんど再建してません。『浜風きらら』も4月にならないとオープンしないし、復興住宅などからこの辺りにつながる橋もまだ建設中です。復興が進んで新しい人の流れができてくれば、何とかなるかなって思ってるんですけど……」 これは、久之浜だけに限った話ではありません。岩手・宮城・福島の津波被害の大きかった沿岸地域では、仮設店舗から店を再建しても多くの場合、肝心の客が集まらずに売り上げが見込めないという現実があります。