効率〝一辺倒〟を反省 欧米の農政トップ 中小農家支援へ
大統領選挙、政治の混乱 実現に障壁も
ただし、欧米の農政が直ちに家族農業重視に向けて大きく転換するかどうかははっきりしない。立ちふさがる要素の一つは政治だ。 米国の農政をウオッチしてきたジャーナリストのエド・マイスナーさんは電話インタビューに応じ、「ビルサック長官が小規模な農業を大切にしようというメッセージを出していることは評価できる。しかし、農政の柱となる米国農業法は議会が練り上げる。農務省はアドバイザーの立場に過ぎない。企業的な農業を進めてきた野党共和党の意向を無視して転換することは難しいだろう」と解説する。さらに大統領選挙で共和党のトランプ氏が再選された場合、支持基盤である大規模農家を重視する傾向に拍車がかかる可能性すらあると指摘した。 欧州の場合も複雑だ。農林中金総研の平澤明彦理事研究員は「EUの農業部門は以前から中小農業者への支援と大規模農業者の補助金制限を進めてきた。ヴォイチェホフスキ委員の発言は意外なものではない」と話す。しかし、昨年から始まった新しい共通農業政策は、加盟国による自主性を重視する仕組みとなった。欧州内では移民などの弱者を排斥する右派政党が各地で躍進するなど政治の混乱が続く。ヴォイチェホフスキ委員のかけ声だけで、現場の農政が動くかどうかは疑問だ。(特別編集委員・山田優)
日本農業新聞