昔じゃ考えられない「長期の夏季休暇」を設定する新車ディーラー! 最大10連休なんて店もあるが裏で苦悩するディーラマンもいる
長期休暇をモヤモヤした気もちで過ごすセールスマンも少なくない
「ディーラーによって長期休業を年末・年始以外にも設ける背景は異なりますが、メーカーの子会社的立場のディーラーも多く、販売現場にメーカーの人間が出向していることも珍しくありません。そこでメーカーの休業カレンダーに合わせるということもあるようです。また、ディーラーは販売代理店なのでお客から受注すると、当該車両についてメーカーへ発注する作業というものが発生します。メーカーが休みの間の受注案件はメーカーの休みが明けるまで『積み残し』のようになってしまいます。それでもいまはオンラインでのやり取りとなるので送りっぱなしでもいいではないかとも考えがちですが、メーカー側も『完全無人』というわけにもいかなくなるので、これもディーラーの夏休みなどが長期化しがちになった一因となっているのではないかとも聞いています。もちろん、現場で働く従業員の雇用環境改善というものも大きく働いているでしょう」とは事情通の話。 新車ディーラーの創成期には日曜は休業が当たり前であった。個人需要よりも法人需要が絶対的に多かったこともあったようだ。その後も、マイカーブームが起きても日曜休業を続けていたが、バブル経済期になると史上空前レベルといえるマイカー需要が沸き起こり、日曜営業をはじめ、年数回の長期休業を除き定休日も設けずに営業するようになった。 そのころを知る人は、「とにかく毎日深夜まで新車がよく売れました。1カ月休みなく働き続けることも珍しくありませんでした。それでも、『5月の連休や夏休み、年末・年始ぐらいはしっかり休もう』ということで、そこだけは必ず休めるようになっていました」とのこと。 バブル経済崩壊後は経費節約という側面からも(店を開けていれば光熱費などがかかる)、店舗定休日を設けるディーラーが目立ってきた。その後は「働き方改革」、そして働き手不足もあり、店を開けたくても開けられなくなり、いまでは定休日を設けることは当たり前となっている。 過去には月曜日から金曜日の平日5日間を連休にするのが一般的と前述したが、その当時は前後の土曜・日曜は半数出勤としていたので、店を閉めるのは5日でも、そこに勤めるスタッフは7日間の連休となっていた。しかし、深刻な働き手不足となっている現状では半数出勤を行うこともできない。これも店舗の長期休業がより進む原因となっている。 新型コロナウイルスの感染拡大がひどかった2020年や2021年では広く行動自粛が求められ、小売り店舗の多くが自主休業するなかでも法定点検だけは請け負っていたこともあり、新車ディーラーは時短営業しながらも店を開け続けた。 遠出や外食がなかなかできないなか、貯蓄だけが増え続け、そのはけ口として人々の視線は新車に向かったため、新車ディーラーはそれなりににぎわっていた。そのようなころは仮にお盆の時期でも店を開ければ集客を期待できたが、現状では帰省やレジャーに出かける人が多くなっているので集客は期待できない。 過去には長期休業明けには休み中に事故などを起こしたお客からの板金修理依頼が殺到していたのだが、安全運転支援デバイスの普及もあっていまは板金修理が殺到することもなくなるなど、休みやすくなっていることも大きいようだ。 ただ、そのぶん販売促進活動のための稼働日数はより減少していく。毎年8月の新車販売台数が極端に落ち込むのは、夏休みによる新車購買意欲の減退も大きいのだが、稼働日数不足ももちろん影響している。残業もなく休みも増えたが、ノルマとも呼ばれた販売目標などは大きく変化していない。長い休みの間をモヤモヤした気もちで過ごすセールスマンも少なくないと聞いている。
小林敦志