「この国では”運悪く”窓から転落することも珍しくない」…『プーチン体制』と戦い続けたナワリヌイ氏が明かした「災難だらけの日常」
空から落ちてきたレンガで頭を…
トムスク州で統一ロシアを打ち破り、ノボシビルスク州でもせめて相手候補を窮地に追い込めたら、と期待を抱いていた。過去2年間に私たちの事務所は300回以上も手入れを受け、黒マスク姿の連中がドアをチェーンソーで壊して侵入し、そこら中を捜索した末に電話とPCを持ち去った。そんなたび重なる脅迫にもかかわらず、私たちは強く大きくなる一方だったから、満足感があった。 当然、私が喜べば喜ぶほど、クレムリンもプーチン個人もおもしろくない。おそらくはこれがきっかけで、あの男が「アクティブメジャーズ発動」の命令を下すことになったのである。アクティブメジャーズとは、ソ連時代のKGB(国家保安委員会)やそのKGBに源流を持つFSB(ロシア連邦保安庁)の高官らが記録文書に伝統的に使用してきた用語で、非公然の積極工作を指す。対象者を消せば、問題は片付くというわけだ。 そんな感想だから、日常生活を送っていても、ありとあらゆる災難が降りかかり、トラに襲われることさえある。敵の一味に背後から槍で突かれても不思議ではない。連れ合いに料理の腕前を披露しようとしてうっかり指を切断したり、ガレージに置いてあったチェーンソーが作動して運悪く足を失ったり、空から落ちてきたレンガに頭を直撃されたり、窓から転落したり。よくある心臓発作などの不幸に見舞われるのも、痛ましいことだが、この国にいたら驚くほどのことではない。 読者の中には、背後から槍で突かれたことがある人はまずいないと信じたいが、実際に自分が経験したり、他の人々の経験を見聞きしたりすると、その衝撃は生々しく感じられるものだ。この飛行機に搭乗するまでは、まさに私もそんなふうに考える一人だった。
アレクセイ・ナワリヌイ、斎藤 栄一郎
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