首位FC東京を撃破!主力流出も鹿島アントラーズはなぜ強い?
「他チームからの移籍で選手を補強することもある程度は視野に入れていかないと、チーム作りが間に合わない時代になってきた。10年どころか、3年ないし4年しか在籍しないことを前提にチームを作らないといけない。ただ、移籍と言っても、バリバリの日本代表クラスの選手を獲得することはやはり避けたい。培ってきたアントラーズのカラーというものがあるので」 アントラーズらしさとは黎明期の土台を作ったブラジルの英雄ジーコが伝授した、敗北の二文字を心の底から拒絶する勝者のメンタリティーにある。ぶれないアイデンティティーが常に脈打っているからこそ、外国人ではブラジル人選手が、日本人選手でも新卒組や移籍組を問わずに憧憬の視線を送る。 このオフの動きを追えば、鈴木や安部らが抱く強い海外志向を把握したうえでFW伊藤翔(31)を横浜F・マリノスから、MF白崎凌兵(26)を清水エスパルスから獲得。徳島ヴォルティスへ期限付き移籍させていたブエノも復帰させた。開幕直後にDF小池裕太(22)をシントトロイデンから期限付き移籍で、夏場にはMF小泉慶(24)が柏レイソルから完全移籍で加入。2021シーズンからの加入が内定していた東京五輪世代のFW上田綺世(21)も、7月に法政大学サッカー部を退部して加入した。 FC東京戦では伊藤、白崎、小池、小泉が先発し、すでに3ゴールをあげている上田も後半途中からピッチに立った。鈴木強化部長をして「新しい選手がメンタル的にもフィットしている」と言わしめる理由は昨シーズンに復帰し、今シーズンからキャプテンを務める内田の存在を抜きには語れない。 「練習でもよく声をかけてくれているし、そういう役割を果たしてくれている」 鈴木強化部長が言及した「そういう」とは、アントラーズの伝統を紡ぐことに他ならない。小笠原さんや曽ヶ端の出場時間が減っていたなかで、2010年夏にドイツへ旅立った内田を復帰させてから1年半あまり。濃密な経験を積んだ元日本代表を介して、ピッチの内外で効果が現れつつある。 「ジーコを含めた先輩たちが作ってくれた、基盤というものがあるとチームは崩れにくい。なので、優勝争いはできる。簡単じゃないけど、頑張ればできる。ただ、ここからタイトルを取るとなるとまた話は別。(優勝へ)必要なものを求めながら、残りのシーズンを戦っていくことも大事ですよね」 ドイツへ移籍するまでに前人未踏のリーグ戦3連覇を、不動の右サイドバックとして経験している内田は独特の表現で現状をとらえた。それでも、直近の5試合で4勝1分けの星を残し、FC東京に肉迫した軌跡に対しては悲観していない。 「追われる難しさをFC東京がわかっているかどうかは知らないけど、追う方が楽だからね。僕らの背中が見える位置にまで来て、残りの試合で彼らにどのような重圧がかかるのか。やっとスタートラインに立った気がするけど、変な話、いい位置にいる気がします」 今シーズンの目標は、目の前に存在するタイトルをすべて独占すること。FC東京戦が終わった瞬間に、常勝軍団の照準は敵地での第1戦をスコアレスドローで終えている広州恒大を、ホームに迎える18日のACL準々決勝第2戦に切り替えられている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)