どうなるクリミア情勢 国際政治に翻弄されるウクライナ
キエフの独立広場で繰り広げられた反政府デモの結果、ヤヌコヴィッチ政権が崩壊し、5月に大統領選挙が実施される見通しとなったウクライナ。しかし、今後の展開が全く読めない情勢を迎えています。ヤヌコヴィッチ前大統領は先月28日にロシア国内で記者会見を開き、事実上の保護下にあるロシアを後ろ盾にして発足したばかりの暫定政権への対立姿勢を鮮明にしています。クリミアにある2つの空港はロシア軍部隊とみられる武装集団に制圧され、ロシア軍部隊の大規模な軍事演習がウクライナとの国境付近で計画されています。現在のウクライナはどのような状況なのでしょうか?
キエフ市民が語る現在のウクライナ
ニュースの中心は首都のキエフから南部のクリミアへ移動しましたが、ヤヌコヴィッチ政権崩壊から約1週間がたったウクライナ各地の様子はどういったものなのでしょうか?キエフ在住で西ヨーロッパの政府系機関に勤務する女性にお話を伺いました。 「キエフでの生活は徐々に通常モードに戻りつつあります。デモ隊と治安部隊が衝突を繰り返した独立広場周辺はまだまだ革命後のような雰囲気ですが、郊外に足を運ぶと、まるで政変があったことすら忘れてしまうくらい、以前と何も変わっていません。ただ、私もそうなのですが、反政府デモを間近で見ていたため、治安部隊に襲われる夢を今でも見ます。まだ傷は癒えていません」 この女性はさら続けます。 「ヤヌコヴィッチ政権崩壊の原動力となったキエフのデモを主導していた一部のグループは、過激な思想を持つナショナリスト達だったのですが、政権崩壊後もウクライナ西部や中央部では一定の影響力を持ち、各自治体の首長に退陣を求める運動を展開しています。民主的プロセスを経ることなく、暴力も辞さない姿勢で自治体のトップを変えてしまおうとする運動は非常に危険ですが、時間と共に他の市民の間にも冷静さが戻ることを祈るしかありません。東部に関しては、安定を維持するための自助努力が他地域よりも積極的に思えます。というのも、ウクライナのオルガリヒ(新興財閥)はみな東部に拠点を置いており、この地域が安定しなければ支配階級にとっても不利益になるからです。私は最初に安定を取り戻すのが東部だと確信しています。一番懸念しているのは、クリミアの今後です。ロシアの揺さぶりが強まってきましたが、ロシアがそれだけクリミアにこだわるのなら、ウクライナの安全と引き換えにクリミアを手放しても気にしないという声は多いです。ただ、クリミアにはタタール人のようなマイノリティも多く住んでおり、彼らの安全を保護するのはウクライナの義務ではないでしょうか」