リメイクアニメはなぜ批判されるのか メディア間“翻案”の歴史からみるリメイクの創造性
リメイクの創造性も議論しよう
リメイク企画の増加は、日本アニメの歴史がそれなりに積み重なり、名作が数多く生まれてきたということでもある。リメイクが過去作との比較を生じさせるということは、埋もれた名作にスポットを当て直すことでもある。例えば、『赤毛のアン』は高畑勲の作品だが、若い世代はよほどのことがない限り、同作に出会うことはないだろう。リメイクが発表されることで過去のアニメにも注目が集まり、その描写の違いから学べることはたくさんあるはずだ。その比較の中で、仮に演出力の違いが鮮明に現れ、昔の作品の方が優れていたとしても、そのことで現代アニメに欠けたものに気づけ、貴重な学びの機会にできるはずだ。同時に新たなリメイクではどんな要素が加わっているのかを見つめることも大切だろう。 リメイクは商業上のメリットだけではない。「比較」が歴史研究的な視座を与えることもあるし、新たな創造性を獲得することもあり得る。むしろ、マンガや民話をアダプテーションを多くしてきた日本アニメの創造力は、かなりの部分翻案に宿っている可能性がある。「単なる焼き直し」や「昔は良かった」というステレオタイプな言説で終わらず、どんなリメイクが優れたものかをつぶさに批評・研究する姿勢はアニメの発展に欠かせない要素だと筆者は思う。 引用・参照 ※1. 『リメイク映画の創造力』水声社、2017年、編著:北村匡平・志村三代子、P16 ※2. 『文学とアダプテーション ヨーロッパの文化的変容』春風社、2017年、編著:小川公代・村田真一・吉村和明、P14 ※3. 『文学とアダプテーション ヨーロッパの文化的変容』春風社、2017年、編著:小川公代・村田真一・吉村和明、P15 ※4. 『アニメと戦争』日本評論社、2021年、著者:藤津亮太、P15
杉本穂高