危険運転適用求め署名 長男、長女「母の無念晴らす」 富山・総曲輪の飲酒運転死亡事故
今年3月、富山市総曲輪1丁目の国道41号で横断歩道を歩行中、飲酒運転の乗用車にはねられて亡くなったピアノ講師井野真寿美さん=当時(62)、同市西中野本町=の長男中田康介さん(36)と長女広瀬すみれさん(32)が11日、富山新聞の取材に応じた。運転手は逮捕されたが、2人は「飲酒運転は絶対許せない。母の無念を晴らしたい」と悲痛な心境を吐露。より法定刑の重い危険運転罪の適用を求める署名活動を始めており、責任の所在を明確にすることを望んだ。 【事故略図】 事故は3月21日午前1時20分ごろに発生し、井野さんを乗用車ではねた富山市内の40代男性が道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで富山中央署に現行犯逮捕された。男性は釈放され、6月に酒気帯び運転と自動車運転処罰法違反(過失運転致死)の疑いで富山地検に書類送致された。地検は任意で捜査している。 中田さんと広瀬さん、遺族代理人の髙橋正人弁護士が取材に応じた。 髙橋弁護士によると、男性は飲食店2軒をはしごして酒を飲んだ後、現場近くのコインパーキングに止めた乗用車を運転した。フロントガラスに積もった雪で視界が悪いまま発進し、一方通行の通りを逆走して国道交差点を左折したところ、井野さんをひいたとみられる。 ●男性説明「代行つかまらず」 中田さんと広瀬さんによると、男性は事故後に2人と面会し、飲酒運転の理由について「代行がつかまらなかった」などと説明したという。 男性が過失運転致死の容疑で書類送検されたことに「なんでと思った。納得できない気持ちが募った」と話す中田さんと広瀬さん。最愛の母を奪った輪禍の責任の所在を究明したいとの思いが膨らみ、自動車運転処罰法の危険運転致死罪での起訴を求めて署名活動を行うことを決めた。 ●1週間で2万5000人署名 28、29日に街頭活動 5日からインターネットのサイトで署名を募ったところ賛同者が11日現在で2万5千人分集まった。「勇気をいただいた」と感謝を口にする2人は28、29日に富山市のグランドプラザで街頭活動を行い、ふるさとでの協力を呼び掛ける。来年1月ごろに富山地検に署名を提出する予定だ。 中田さんは音楽が大好きな井野さんが楽しそうに飲食店でピアノを弾く姿が忘れられないといい「誰からも愛される人だった」としのんだ。広瀬さんは「平穏な未来が全て奪われた。母を返してほしい」と涙ながらに語った。 髙橋弁護士は「運転手の男性は飲酒の影響で注意機能の低下があったと考えられる」と説明。フロントガラスの雪をどかさず運転し、道路を逆走して事故を起こした状況から「故意に危険な運転をしたと認定されるべき」と話した。 ★危険運転致死傷罪 著しい酒酔い、速度超過などによる危険な運転で起こした交通事故を過失ではなく故意の犯罪と捉える罪。処罰対象として「アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難」「進行制御が困難な高速度」などの行為を規定。法定刑の上限は懲役20年で、過失運転致死傷罪の懲役7年より重い。1999年に大型トラックの飲酒運転で幼い姉妹が死亡した事故などを契機に2001年に刑法に新設され、05年に厳罰化された。