マーク・フォースター監督の手腕が光るもうひとつの物語『ホワイトバード はじまりのワンダー』
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。 【水先案内人 高松啓二のおススメ】 イジメの加害者で退学処分になったジュリアン(ブライス・ガイザー)は、祖母で画家のサラ(ヘレン・ミレン)から第二次大戦時にうけた少女時代の経験を聞かされる。『ワンダー 君は太陽』のアナザーストーリーだが、特に観てなくても成立する。 1942年、フランスの片田舎に突如ドイツ軍が進駐してくる。ユダヤ人のサラ(アリエラ・グレイザー)は、両親と離ればなれとなり、足が悪いイジメられっ子のジュリアン(オーランド・シュワート)の家に匿われることになる。納屋での心優しいジュリアンと厳しい現実を忘れるための空想ドライブは、夢の世界へと誘う。 マーク・フォースター監督は現実とファンタジーの融合を描き続けてきただけにこだわりのシーンとなっている。絵が上手なサラ、白い鳥、名前の由来など伏線が見事に回収され、よく練られている。 クラスのイジメっ子のヴィンセントが、黒い制服を着た民兵団(ミリス)になるが、これはフランス人の対独協力者からなる組織である。ユダヤ人の強制収容と治安維持が任務だ。彼が、足の悪いジュリアンを痛めつけ罵倒するのはナチスの本質そのものでイジメの延長線上にナチスがいるのだ! 劇中の「親切にはどれほどの勇気が必要か」のセリフが深く心に刺さる。 <作品情報> 『ホワイトバード はじまりのワンダー』 2024年12月6日(金) 公開 監督:マーク・フォースター 脚本:マーク・ボムバック、R.J.パラシオ 出演:アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ブライス・ガイザー、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレン