日産、東京オートサロン2025出展車を先行公開 〝趣味をクルマで楽しむ”2台のエクストレイル、災害時に役立つキャラバン
日産自動車は、2025年1月に千葉県の幕張メッセで開催される「東京オートサロン 2025」にブースを出展し、そこに4車種のカスタマイズ車を展示することを発表した。 【画像】ラゲッジに父と息子のそれぞれの趣味の道具を搭載。それらをアウトドアに持ち出して楽しむためのテラスをトレーラーでひく。こうしたクルマの使い方は親子関係に対して何か刺激になりそうなもの。親子で来場が多い東京オートサロンで提案するカーライフとしてはなかなかおもしろい存在になりそう 今回はその中から3車種の紹介をしていこう。 ■ 「趣味をクルマで楽しむ」2台のエクストレイル まずはエクストレイルをベースにした「X-TRAIL unwind concept(エクストレイル・アンワインド・コンセプト)」と、「X-TRAIL remastered concept(エクストレイル・リマスタード・コンセプト)」。 これら2台のエクストレイルを使って表現するのは、自分の「好き」を詰め込んだ「chill(チル。くつろぐなどの意味)」を感じる世界観である。ストーリーとしては本来、インドアでたしなむような趣味を持つ親子が、それぞれの趣味をエクストレイルに搭載してアウトドアに出かけ、同じ場所でそれぞれの趣味を体験しつつ、気持ちのいい環境や親子のつながりを楽しむというもの。 新型エクストレイルは父親のクルマで、ラゲッジにはエスプレッソをいれるためのエスプレッソマシンを積む。先代エクストレイルは息子が乗り、こちらはラゲッジにアナログレコードを楽しむため、ホーム用のプレーヤーやスピーカーなどの装備を搭載している。そしてそれぞれの趣味をくつろぎながら味わうスペースとしてトレーラーで牽引する「テラス」を組み合わせるという3台セットの展示となる。 なお、車名に続くコンセプト名はすべて英語小文字で統一しているが、大文字の英語ではフォーマルなイメージが出てしまうため、丸みを帯びた書体での小文字を選択。車名の表記でもクルマのコンセプトに合うリラックス感を出すといった狙いからのものだ。 これら新旧エクストレイルに採用されたコンセプトは、制作スタッフの中でいわゆるZ世代と呼ばれる若手が考案したもので、この世代のクルマの活かし方や楽しみ方、価値感が表現されたものとなっている。 2台のエクストレイルに搭載された趣味についても、実際のところアナログレコードなどは若い世代に注目されていて、当時のモノをよりよく再現した音源をリマスタード音源などと呼び、そういったレコードをアナログプレーヤーで聞くという趣味を持つ人も多いそうだ。 また、アウトドアレジャーでは屋外でコーヒーを飲むスタイルもあるが、今回のエスプレッソはその延長線でもある。 クルマの趣味というとドライブやモータースポーツなど「走ること」をメインに考えるのが一般的だが、そうした定義は世代ごとに変わっているのもまた当然で、この2台のエクストレイルは「趣味のクルマを楽しむ」とは少し異なる「趣味をクルマで楽しむ」といった方向性に思えた。 このようにそれぞれ「別の趣味を持つ親子」をつなぐアイテムとして「クルマ(エクストレイル)」があることもポイントで、近年の東京オートサロンはクルマ好きの父親に連れられた子供も多く来場しているだけに、こうしたクルマの使い方の提案は興味深いものだと思う。 ブースではクルマ作りを見るだけでなく、これらのクルマがあることでのストーリーなども想像してみてほしい。 ■ 実際に購入できるもので仕上げたキャラバン「ディザスター・サポート・スペック」 続いて紹介するのはキャラバンをベースにした「DISASTER SUPPORT SPEC.(ディザスター・サポート・スペック」だ。日産は2021年より東京オートサロンに向けてキャラバンをベースにした出展車を製作してきた。 2021年は移動できるオフィスとして働き方の提案となった「NV350 CARAVAN OFFICE POD CONCEPT」を出展し、2022年は新しい外遊びの基地としての「NV350 CARAVAN MOUNTAIN BASE CONCEPT」。2023年はこの年に新たに発売を開始したリーフのバッテリを再利用した「ポータブルバッテリーfrom LEAF」を職人の現場で生かすための「NV350 CARAVAN POWERED BASE FOR PRO」。そして2024年は緊急、災害時に防災拠点となる支援車両の「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」であった。 上記のシリーズはどれも大きな反響を得たが、2024年の「NV350 CARAVAN DISASTER SUPPORT MOBILE-HUB」が提案した防災のコンセプトはさまざまな企業、自治体から問い合わせを受けただけでなく、実際に車両の視察まであったほど大きな反響を得た。そしてその結果を受けて企画されたのが、実際に使ってもらえる「備えるCARAVANの製作」というもの。 「備えるCARAVAN」が目指したのは実際に購入できるもので、法人、個人、自治体など必要とするところへ届けることができることだ。そのために考えたのが車体へ大きな加工をしないこと。それぞれの用途で使えることもキャラバンとしては重要なポイントだ。それができれば新車、中古車、さらにはすでに所有しているなどを問わず、すべてのキャラバン(対象になるボディタイプ)を「備えるCARAVAN」に変えることができる。 こうしたプランを元に、2025年の東京オートサロンの出展車「ディザスター・サポート・スペック」が製作された。 ディザスター・サポート・コンセプトでは出動時、以下のようなシーンが想定されている。企業が所有している場合、有事があった際は社内の備蓄倉庫から必要な品を取り出すと同時に、普段業務で使用しているキャラバンを支援車にするための装備を搭載。そして2名による支援部隊が現地入りしてサポートを行なうというもの。 サポートは数日にわたることが想定されているが、現地では宿泊施設が使用できないので車内で寝泊まりするためのスペースもある。また、現場では事務作業もあるのでそれを行なうための十分な広さがあるテーブルも装備される。 さらに停電が続いていても車載のバッテリとソーラーパネルで電力を確保し、インターネットにつなぎ情報収集や本部との連絡を行ない、その電気で現地の人のスマホなどへの充電も行なうというものだ。 装備については写真でも紹介するが、このクルマは買えることを前提に考えているので、特別な装備はできるだけ減らして、すでに販売されている純正アクセサリーを有効に使用しているのもポイントだ。 具体的にはまずポータブルバッテリーfrom LEAF、ルーフ上のヘビーデューティーラック、リアラダー、フォグランプ、グリルイルミネーション、ヘッドランプヒーター、ナビゲーション(9インチ)、ドライブレコーダー、ラゲッジレール・フック、ルーフインナーバー、ワークランプである。 といった「備えるキャラバン」ディザスター・サポート・コンセプト。有事のときには頼もしいクルマではあるが、1台で多くのことを実行できる能力は多方面に使えるものだけに、もし本当に発売されたらかなり人気が出るのでは、と思えたりする。この多機能キャラバンに興味のある人は、東京オートサロン2025の日産ブースで現車をじっくりと見てほしい。
Car Watch,深田昌之