貯金30万円からブランドを年商44億円に成長させた事業戦略とは|Ameri VINTAGE 代表取締役/ディレクター 黒石奈央子さん|STORY
――事業を年商44億円まで成長させてきた黒石さんですが、何か戦略はありましたか? 本当に地道に、少しずつ売り上げを伸ばしていっただけなんです。これでは型数が足りないな、人数も足りないなと、販売数もスタッフも徐々に増やしていきました。なので、何かをきっかけに爆発的に拡大したというようなことはないんですよね。 戦略という意味では、アパレルは「その服可愛いね、どこの?」という言葉を生み出せるかどうかが肝だと思っています。SNS黄金時代には、「この服どこのだろう?」といかに知らない人に思ってもらえるかどうかが成長のカギです。そこから、実際に購入してもらうためには価格も重要。クオリティは高いけれど、思ったよりも“ちょっと安いかも”という価格設定にしています。安すぎても、逆に高すぎてもダメ。特に日本のマーケットは中流層が多いので、ハイでもプチプラでもない、ミドルプライスが売れるんです。デザインも同じで、全てはバランスだと思っていて。個性がありすぎても受け入れられず、普通すぎても刺さらない。日本人は、“人とちょっと違う”というのがすごく好きなんですよね。 海外でもよくリサーチをしますが、海外の人とも好みの傾向がかなり違っています。みんなと一緒がいい、個性を出し過ぎるのは嫌、でもちょっと目立ちたい、というのが日本人の国民性。その匙加減をデザインに落とし込むことがマストです。例えば、前から見ると普通のトレンチコートだけど、後ろのディテールが凝っていて可愛いとか。「これくらいの個性的なデザインだったら着てみたい」と思わせる要素を、全ての商品に入れるようにしています。 SNS上では、一瞬で覚えてもらえる“ブランドらしさ”を少しだけ振りかけることで、ユーザーはスクロールの手を止めて商品をクリックしてくれるようになります。なので、“THE シンプル”な服はほぼ無いですし、売れません。逆にそのデザインのスパイスが、アメリらしさにも繋がっていると思います。