再生可能エネルギーの接続拒否 ビジョンなきエネルギー政策の帰結だ 共同通信社・井田徹治
再生可能エネルギーの電力の固定価格買い取り(FIT)制度によって太陽光発電事業などが急拡大し、九州電力など計五つの電力会社が受け入れを保留することを表明した。2012年の導入以来、再エネの拡大に貢献してきたFITは、わずか2年余りで見直しを迫られる状況に陥った。なぜ、こんなことになったのだろう? その背景には、再エネよりも原子力発電などを重視する電力会社の相変わらずの姿勢、進まない発電と送電の分離、定見のない国のエネルギー政策などがある。 [この記事に対する反論]再生エネ接続問題、根拠なき批判を撃つ
FITは、再生可能エネで発電した電力を有利な価格で長期間、電力会社が買い取ることを義務付ける制度だ。日本では導入以来、メガソーラーと言われる大規模太陽光発電を中心に発電量が急増した。ところが再エネの接続申込量が多い九州電力は「7月末現在の申込み量が全て接続された場合、春や秋の晴天時などには、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れる」と、接続を認めるかどうかの回答を保留すると表明。他の電力会社も同様のロジックでこれに追随した。 だが、この主張には多くの不透明な部分がある。接続申込量よりも実際に稼働する設備の容量は小さいし、太陽光や風力の稼働率は30%前後なので実際の発電量はさらに小さくなる。「昼間の消費電力」が何を指すのかも不明確だし、他の電力会社との融通や過剰な電力を吸収する揚水発電所活用の可能性なども明らかにされていない。 数々の仮説の上、十分なデータを公表せずに早々に回答保留を持ち出す姿勢はフェアではない。再エネの電力よりも、自社が所有する原発などの発電所を優先したいという電力会社の考えがその背景にあると言える。川内原発の再稼働に目処が立った直後に、九電が回答保留を持ち出したのは偶然ではないだろう。 明確なデータを公表せずに電力会社が「供給に不安が生じる」と主張できるのも、再エネの接続拒否を持ち出せるのも、電力会社が、送配電網をも独占して所有しているという、国際的には異常な状況が日本で長く続いている点に帰着する。運送会社が高速道路まで所有し、他社の利用を制限するようなものだ。