「ナイキ以上に市場を牽引している企業はない」ビジネスのキーパーソンが語る現在地
―日本市場のポテンシャルは? 日本に限って言えば、ナイキにとって何年も前から特別な市場です。私たちは日本で大きな成功を収めてきました。例えば駅伝を見ても、10区間中7区間でナイキのシューズを履いたランナーが区間賞を獲得していました。そして実は、そのランナーの多くは、私たちが実際に製品を発売する前に、最新作「ナイキ アルファフライ 3」のプロトタイプを履いていたのです。このことからも分かるように、私たちは日本で大きなチャンスがあり、製品のイノベーションだけではなく、東京にあるナイキ銀座店のような小売店での経験によって、このチャンスを生かすことができると信じています。 ナイキ銀座店は、ナイキ製品全般を展示するショーケースですが、ランナーのために特別に作られたユニークなアパレルとフットウェアがあるので、ランナーには特に楽しんでいただける場所です。また、ランナーが新しくインパクトのある形でコミュニティと関わることができる場所でもあります。 ―一時はD2Cにフォーカスするために卸売ビジネスを縮小していましたが、近年は再び注力し始めたと聞きました。 D2C事業については大きな手応えを感じています。ここ数年、非常に大きな成長を遂げていて、事実として、デジタルの方では2023年は2020年比で30%以上の成長を遂げました。これは、消費者ニーズに合わせてD2C事業に注力した結果であり、ブランドがD2Cをチャネルとしてより強力に展開することができたということも表しています。私たちは、直売における現在の強みと、卸売パートナーシップへのさらなる注力を組み合わせることで、市場を成長させることができると確信しています。 ―一部モデルは製造数を減らしたり、価格の値上げを検討しているという報道もありましたが。 ここ数年、ナイキは人気商品を消費者に紹介したり、コンスタントに登場させたりして、本当に良い結果を残してきました。私たちは、これらのフランチャイズが長期にわたって生き残っていくために、効果的に管理し、長期的な健全性を確保したいと考えています。 同時に、ナイキが提供するおなじみの人気商品のパフォーマンスを向上させ、新たな一面を提示するようなイノベーションアイテムとして、消費者が享受できるような形で、新しいイノベーションを世に送り出していきます。それを実現することで、新しく魅力的な方法で市場に貢献できると信じています。 ―パリのプレスツアーではこれまでにない新しい取り組みも発表されました。そういったチャレンジングな取り組みを今後も増やしていく? ええ。実際、イノベーションに関して私たちが今お見せしているのは氷山の一角だと思います。そして、私たちは数年にわたるプロセスや段階によるイノベーション開発を行っており、そのほとんどは今はまだ皆さんにお見せすることができません。しかし、この先何年にもわたって、消費者のため、アスリートのため、そしてスポーツのために、この会社が何を用意しているのかを考えると、私たちも本当にわくわくしています。 ―ナイキの未来は明るい? 未来は明るいと思います。ナイキが素晴らしいのは、その人のパフォーマンスを向上させるような、市場を刺激するような新しいイノベーションを提供することができることです。ここ数日間で皆さんに見ていただいた製品からも分かるように、私たちは素晴らしいイノベーション・プラットフォームを持っていますし、そしてそれは、これから市場に導入する数年にわたるプラットフォームの始まりに過ぎません。私たちは、それが今後数年間のナイキの成長を牽引すると信じています。私たちだけがこの革新に興奮するのではなく、より重要なことは、私たちが提供する製品に消費者も興奮するということです。 (聞き手:伊藤真帆)