世界遺産登録で日韓対立 徴用工「forced to work」への日本政府の立場は
軍艦島(長崎県・端島炭坑)など23施設の世界遺産登録をめぐり、日韓でひと悶着ありました。対象となったのは「強制労働」という文言。最終的に妥結したものの、日本が出した声明の中の「forced to work」という表現をめぐり、再び紛糾しました。日本側は「これは強制労働を意味しない」と説明しますが、徴用工問題に対する日本政府の考え方はどうなっているのでしょうか。
「強制労働」めぐり日韓で食い違い
ユネスコ世界遺産委員会は7月5日、「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に登録することを決定しました。対象となるのは九州の5県と山口、岩手、静岡の計8県にまたがる製鉄・製鋼、造船、石炭産業関係の23遺産です。 この決定に至る前、韓国は、この中に朝鮮人(朝鮮半島出身者)労働者が強制徴用された施設が含まれているとして世界遺産への登録に反対したので、日韓間で協議が行われました。そして6月21日、久しぶりに開催された日韓外相会談で妥協が成立し、日本側の「明治日本の産業革命遺産」と、韓国側の「百済歴史地区」という両国の推薦案件が共に登録されるよう協力していくことになりました。 ところが、正式の決定が行なわれる世界文化遺産委員会で、日韓双方が行なう声明の内容に食い違いのあることが判明しました。これでは決定ができなくなります。 日本側は、公表されていませんが、朝鮮人が労働に従事していた施設について歴史的事実を説明する表示を行なう考えでした。一方、韓国側は声明の中で、朝鮮人に関する「forced labor(強制労働)」という文言に言及することにして、委員会の開催前に声明案を日本側に伝えてきました。しかし、この文言を使うことは外相協議までの努力を無にすることになるので日本側としては受け入れられず、韓国側に強力に是正を求めました。 結局、日韓双方、それに世界文化遺産委員会の議長などの努力であらためて妥協が成立しました。日本側代表は、「日本は、1940年代にいくつかのサイトにおいて、その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた(forced to work under harsh conditions)多くの朝鮮半島出身者等がいたこと、また、第二次世界大戦中に日本政府としても徴用政策を実施していたことについて理解できるような措置を講じる所存である」と表明しました。 韓国側代表は日本側の発言を引用し、日本が表明した措置を「誠意を持って実行する」ことを信じて全会一致に加わったと述べました。