渡辺えり、母を亡くした悲しみ「私69歳で孤児になっちゃった」木野花「悲しむのも、楽しむのも、そもそも一人の時間って大切なものなの」
◆友との時間も一人の時間も大事に 渡辺 2025年1月5日に私が70歳に、8日には木野さんが77歳になりますね。8日は木野さんにも出演していただく舞台『鯨よ! 私の手に乗れ』『りぼん』が初日を迎えます。 木野 『鯨よ!~』は年を重ねたり認知症になったりした劇団の仲間が介護施設に入ることになって、みんなで芝居の稽古をする話よね。 渡辺 施設に入っていた私の母をモデルに書いたので、私の弟や私自身も出てきます。『りぼん』は関東大震災から現代まで、女性がいかに苦難を乗り越えて生きてきたかを描いた、女性の生きづらさをテーマにした作品。 03年の初演時は主軸となる役を木野さんがやってくださいましたが、今回は室井滋さんにお願いしました。出演者はどちらも40人くらい。大集団で舞台をやるなんてお金がかかるから、なかなかできないことですけど、私ももう70歳。思いきっての挑戦です。 木野 えりには年を取っても悟ることなく、ずっとこのまま夢や煩悩を抱えて走り続けてほしい。
渡辺 私ね、親に反対されていたこともあって、親に舞台を観てもらうことを張り合いにしてきたところがあるの。だから親を亡くしたいま、なんのために演劇をやっているのかわからなくなっちゃって。稽古場に行っても、気づくとマイナスなことばかり考えてる。 木野 忙しい最中に、そんなこと考えてたの? いまはお母さんを亡くした悲しみでいっぱいだと思うけど、焦らず、思いきり悲しめばいい。 私だってズキズキした気持ちが癒えるのに1年くらいかかったもの。悲しむのも、楽しむのも、そもそも一人の時間って大切なものなのよ。 渡辺 木野さんは、一人の時間を楽しめてるの? 木野 楽しいわよ。ジュノがいるから。でも、こんなふうに何でも気楽に話せる友達が一人でも二人でもいれば、もっと楽しみが増えるでしょ。だから一人の時間も友達との時間も大事にしながら、楽しく生きていきましょうよ。 (構成=上田恵子、撮影=本社・武田裕介)
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