【安田記念回顧】香港馬として18年ぶりのV 天と展開を味方につけたロマンチックウォリアー
天気と展開を味方に
香港馬の勝利は2006年ブリッシュラック以来、18年ぶり3勝目。さすがはGⅠ・7勝のエース。真の王者は場所も条件も問わないというが、まさにその通りの結果になった。ロマンチックウォリアーの強みは成績欄をみればわかるように、どのレースでも好位で流れに乗れるスピードと操縦性にある。危惧された左回りへの対応も17着に沈んだヴォイッジバブルは苦労したようだが、こちらは東京芝で披露した最終追い切りの通り。いらぬお世話といった感じだった。 【安田記念2024 推奨馬】東京コースは複勝率50%で安定感◎! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 馬場は前日、時計が速く7週目でも絶好の状態を維持してきた。開催中に雨が少なく頑健な芝はクッション値としては10に近く少し硬めだったが、この日は8.8。週中と日曜日の雨でほどよい状態になり、土曜日よりわずかに時計はかかったが、走りやすそうでもあった。この点もロマンチックウォリアーに追い風だった。天まで味方につけるのも王者というものか。 前後半800m46.4-45.9は安田記念としてはスローの部類だ。ハナ宣言のドーブネが行き、ウインカーネリアンは控えた。ウインカーネリアンは前走、短距離戦で控えた経験から競りかけなかったが、ここ2年、東京新聞杯で逃げた内容を思えば物足りなさもある。7歳になり、少しかげりもあるかもしれない。大人な振る舞いともいえるが、先頭と前に1頭を置く番手は大きく違う。もう少しわがままな競馬でもよかった。 ドーブネがペースを落としたことで、中距離に実績を持つロマンチックウォリアーは追走にストレスがなかった。後半800mは12.0-11.3-11.2-11.4で上がり勝負になった。今春の東京は瞬発力勝負を避けたいという意図がよぎると、後半、後方勢の台頭もみられるが、じっくり溜めながら進めようとすると好位勢も馬場のアシストを受け、それなりに速い末脚を繰り出せるため、最後は位置取り勝負になる。
22年安田記念とは反対の形に
ラスト600m11.3-11.2-11.4を後方から差し切るのは物理的に無理がある。好位にいたロマンチックウォリアーの上がり600mは33.4。当然ながら4角5番手以内の馬のうち33秒台を記録したのはロマンチックウォリアーだけで、明確な実力の違いがあった。直線ではステラヴェローチェがプレッシャーをかけにいくも、脚力と気合で跳ねのけられた。香港のチャンピオン級の迫力だった。 1分32秒台で決着し、かつ前半800mが46秒台と遅かった安田記念は1986年以降、今回が5例目になる。03年アグネスデジタル、06年ブリッシュラック、08年ウオッカと2000年代に集中し、残りは22年ソングラインと今年。前半が遅く後半で速いラップを刻む形は近年のトレンドともいえる。前半45秒台、後半46秒台だと最後は持続力勝負になるが、ひっくり返ると瞬発力勝負に様変わりする。 22年も後半800m12.0-11.2-11.0-11.4。32秒台であがった差し馬ソングライン、シュネルマイスターと33秒台で粘ったサリオスで決着した。今年はその逆の形。32秒台で猛追したナミュールをロマンチックウォリアーが封じた。昨年と比べてもロマンチックウォリアーの粘り腰は目立つ。好位でスピードに乗りながら、瞬発力勝負に対抗できる末脚をもつ。総合力で一枚上だった。この勝利で気をよくして、ぜひとも宝塚記念でドウデュースをはじめとした、日本の中距離勢と戦ってほしかった。