地中熱でエコ農業 福島県郡山市のリンクエフと日大工学部考案 地下水で冷暖房、農業用水 ヒートポンプ活用
福島県郡山市のベンチャー企業「リンクエフ」は日大工学部との産学連携で、地下水を活用した農業用の地中熱利用システムを考案した。地下水を熱源としたヒートポンプ式冷暖房を取り入れ電気代を抑え、さらに農業用水としても使って水道代を節約。燃料費高騰で苦しむ生産者を手助けし、通年栽培の実現を目指して収入アップを後押しする。これまで注目されてこなかった農業への再生可能エネルギー利活用法で、関係者は脱炭素にも貢献できると期待する。 システムのイメージは【図】の通り。年間を通じて温度が15~20度に安定している地下水をタンクにためる。水中の熱を取り出し、エアコンの室内機に当たる機械(ファンコイルユニット)や床暖房でビニールハウス内の気温を調節する。地下水は作物にまく水にも活用される。今年から県内の農業施設への導入を予定している。 政府はエネルギー基本計画に地中熱を含む再エネ熱の導入拡大を掲げるが、地中熱の普及は進んでいない。環境省による直近の調査では地中熱を利用したヒートポンプ方式の年間設置件数は各都道府県で平均2件程度にとどまっている。比較的高額な導入費が妨げになっているという。
リンクエフは排水するしかなかった地下水を農業用に再利用する費用削減策を思いついた。農業の現場は燃料費高騰による経営圧迫や温暖化に伴う高温障害、生産者減少などの悩みを抱える。新システムは高効率な冷暖房を供給し、市場価格の高い時期の収穫や通年栽培も可能とし、売り上げ増や人員の有効な配置につながる。過剰な生産に伴う収穫物の廃棄問題を緩和することも期待できるとしている。 田村市のシイタケ栽培施設で行った実証試験では、地下80メートルの井戸を掘削し、出力30キロワットのヒートポンプを設置。120平方メートルの作付面積で冬期間、灯油を使うボイラーと比べて暖房費はほぼ半減し、CO2排出量は6割削減する効果が確認された。水道代の削減効果により、初期導入費の回収は15年程度となり、さらに、高単価な作物の通年栽培などによって7年程度に縮められると試算した。 得られたデータを大学と共有し、システムの改良につなげている。既設の井戸を使えば、導入コストのさらなる低減が見込めるという。システムについて特許を出願している。